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夏休み前の静けさ 08
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「俺もですよ。」
「え??」
長谷川のほうを見ると、なんだかすごく悲しそうな顔をしていて。
手に持っているパンがギュッとつぶれた。
「俺も、2つの自分がいるんですよね。」
「え…」
「俺は、幼なじみの3人に好きだって言われてるんですけど、それがすごく心地いいなって思ってる自分もいるし、幼なじみ4人で前みたいに仲良しでいたいっていう自分もいるんです。」
「長谷川…」
「会長は、まだ篠原くん1人だけど、俺の場合は3人。いわゆる三股なんですよね。それが、とても苦しいんです…。」
長谷川の目にはうっすら涙が浮かんだ。
「難しいよな、恋愛って。」
長谷川の頭にポンッと手を乗せて。
優しく撫でた。
すると、溜めていた涙がポロリと溢れ出した。
「今はさ、まだ好きって気持ちがわからないかもしれない。でも、それでいいんだよ。」
「え…??」
「俺もわからなかったけど、いつの間にか好きになってるもんだから。」
「かい、ちょう…」
「気づいたら、好きになってて。気づいたら、そいつのことばっか考えてて。気づいたら、触れて欲しいって思ってしまって。気づいたら、どんどん欲が出て、もっと深く繋がりたいって思うようになって…。そういうもんなんだよ、恋愛って。」
「っ…」
「だから、焦らなくていい。たくさん悩めばいい。それで出た答えが、長谷川にとって本当の気持ちで、答えだから。」
「うぅっ…」
嗚咽を鳴らしながら。
泣き出す長谷川。
おそらく、誰にも話せずに、ずっと溜め込んでいたんだろう。
俺には、孝太とか佑介とか…
相談できるやつがいた。
だから、篠原への気持ちに気づけたし、今こうして篠原と付き合えているんだ。
俺は、長谷川を安心させるように、俺の腕の中に長谷川を包み込んだ。
「こんなことしたら、篠原くん怒りますよ…??」
「いいんだよ。おまえはいちいちそういうこと考えなくて。」
俺は、また長谷川の頭をポンポンと撫でる。
すると、制服が涙で濡れていくのが感じた。
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