アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夏休み前の静けさ 09
-
「会長、もう大丈夫です。ありがとうございました。」
俺の胸を押して、長谷川が離れる。
「もう大丈夫か??」
「はい。すみません、泣いてしまって…」
「いや、たまには泣いたほうがいい。泣かないで溜め込みすぎると辛いだろ。」
「そうですね。」
少し目を腫らしながら、へらっと笑う。
その笑顔からはまだ無理しているのがわかるが、さっきよりは少しましになった気がする。
俺は、ほっと胸を撫で下ろした。
「あの、またつかぬ事聞いてもいいですか??」
「ん??」
「どうして篠原くんと付き合ってることがバレるのが嫌なんですか??」
「え…??」
「だって、体育館で抱き合ってるとことか、さっきの行為とか、言い合いとか見てて、すごく仲のいいカップルだなって…。何も隠さなくていいと思うんですけど…。」
「っ…」
その言葉がグサリと俺の胸に突き刺さる。
痛い。
胸が。心臓が。心が。体が。
痛い…
「会長…??」
俯いて。
胸あたりの制服をギュッと掴む。
そんな俺を見て、心配したのか、それともまずいことを聞いたと後悔したのか、か細い声で俺を呼ぶ。
「す、すみません、こんなこと聞いて…。話したくないですよね、こんなこと…。本当にすみま、」
「自信がないんだ…」
「え…??」
長谷川の声を遮って。
喉から声を絞り出す。
「自信がないんだよ…。」
「どういう、こと…ですか??」
「そのままの意味だよ。隠してるわけじゃないんだ。だた、自信がなくて言えないんだよ。」
「言え、ない…??」
「あぁ。篠原や友達にはあいつが好きだって言える。でも、みんなの前で言えるかって聞かれたら、俺は絶対にこう答える。”言えない”って…。」
「っ…」
「クラスマッチのとき、篠原かっこいいとか、篠原に抱いて欲しいとか言ってるやつがいてさ。さっきも、一緒に昼ごはん食べようって顔真っ赤にしながら言ってる奴もいて…。すっげームカついた。あいつは俺のものなのにって。あいつは俺ものなんだよって。でも、思ってるだけで、それが言えない。言えないんだ…。」
「かい、ちょう…。どうして…どうして言えないんですか!!!あんなに好きなのに…。あんなに想い合っているのに…。どうして…。」
どうして…か。
長谷川の素直な言葉が。
ストレートな言葉が。
どんどん胸に刺さっていく。
こういうとこ、篠原に似てるなって思いながら、ふっと笑って。
口を開いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
43 / 117