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夏休み前の静けさ 11
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空き教室を出て。
教室に向かう廊下を歩きながら、ふと孝太の言葉を思い出した。
『話してくるまでこの教室には入れないから。』
そういえば、篠原と夏休みのデートの話をしようとしてたんだっけ。
すっかり忘れてた…
これで戻ったら孝太怒るかな??
でも、俺は授業を受ける気になれなくて。
教室に向けていた足を屋上に向けた。
屋上のドアを開けると、ギィーッとさびついた音が響く。
それと同時に、授業を告げるチャイムが鳴り響いた。
今の季節は夏真っ盛り。
屋上は尋常じゃない暑さで、俺はすぐに日陰に向かった。
日陰に入ると、冷たい風が吹いていて。
とても心地よかった。
俺は、自分の腕を枕代わりにして寝転がる。
「はぁ…」とため息をついて。
思い出すのはさっきのこと。
長谷川と話していたこと。
そして、ふと昔のことが頭に浮かぶ。
そういえば、昔もそうだったっけ…。
『文武両道で、かっこよくて!!ホント、完璧だよね、夕貴くんって!!』
昔よく女子に言われた言葉。
『夕貴っていいよなー。頭もいいし、運動神経もいいし、ルックスもいいし。もう欲しいものなんてないだろ。』
昔よく男子に言われた言葉。
そんな完璧な人間じゃないのに…。
その言葉に俺がどれほど傷ついたか。
どれほど苦しめられたか。
みんなは知らないだろう。
だって、昔もそうだったから。
みんなにいい顔して、嫌われないように振舞って。
今も変わらない。
全然変わってない。
醜くて、臆病で、弱い。
「バカだよな、俺って…」
「はぁ…」と、またため息をついて。
ゆっくりと目を閉じた。
心地いい風と心地いい暖かさ。
それらに誘われるように眠気が襲ってきて。
俺は意識を手放した。
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