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夏休み-水沢家- 05
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バスから降りて、俺の家まで並んで歩く。
どちらとも話さないで、風景を見ながら歩く。
でも、それはなぜだか嫌じゃない。
普通だったら、気まずいとか思うかもしれない。
だけど、篠原とだからだろうか…
すごく落ち着く。
すごく安心する。
「先輩ってこういう街で育ったんですね。」
「え??」
「俺、隣の街じゃないですか??遠いから、この街には来たことなかったんですよ。」
「そうだったんだ。」
「うん。…いい街ですね。」
「うん…。今度、おまえの街にも行こっか。」
「え??」
「俺も、おまえがどんな街に住んでるのか知りたくなったから。」
立ち止まって。
お互いの顔を見る。
初めは驚いた顔をしていた篠原も、俺の言葉に「はい。」と優しく微笑んで。
頷いた。
俺も心がポカポカと温かくなって。
自然と頬が緩む。
すると、スッと。
手が差し出される。
「え…??」
「手、繋ぎたい。」
「っ…」
まだ時間は昼。
周りに人がいて…
もしかしたら、見てるかもしれない。見られるかもしれない。
そう思うと体が強張った。
「先輩??」
「っ!!」
少しだけ。
指先が触れて肩がビクッと震えた。
こんなことしたら、余計篠原に迷惑かけるのに。
恋人同士なんだから。
手くらい握ればいいのに。
わかってる。
わかってるんだけど…
「やめときましょっか。」
「え…??」
「なんか、先輩嫌そうだったし。」
「べ、別に嫌なんかじゃない!!手、繋ごう!!」
「そんな無理しなくてもいいですよ。」
「む、無理なんかじゃない!!無理なんかじゃないから…」
嫌われる。
その言葉が頭をよぎって…。
怖くなって、こんなことを口走ってしまった。
「じゃあ…」
そう言って、引っ込めた手をまた差し出す篠原。
俺は恐る恐る、ゆっくりと手を繋ごうとした。
そのとき…
「あれ…??夕貴??夕貴じゃん!!」
その言葉に勢いよく手を引っ込めてしまった。
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