アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夏休み-水沢家- 13
-
「ごめんなさいね、夕貴。」
「本当だよ…。なんで兄ちゃんに篠原のこと話さなかったんだよ…。ていうか、なんで兄ちゃん残して出かけるんだよ!!」
「えー、だってー…。柊くんが来るっていうから、おいしいもの食べさせてあげたいねーってお父さんと話してたからー。」
「うん、わかった。わかったから…でも、お願い。今度からは兄ちゃんも一緒に連れて行って…。」
「はいはい。」
あれから、運よく母さんたちが帰ってきて。
あの場はなんとかおさまった。
あのとき、母さんたちが帰って来なかったら…
どうなってたことやら…
「それよりも、柊くんってかっこいいのねー。すっごくきれいな顔ー…。あたし、ああいう顔好きなのっ!!」
「母さん…。」
「で、柊くんとはお友達??」
「え!?えーっと…」
そのとき、篠原の言葉が頭に浮かぶ。
『先輩も大切だけど、同じように先輩の家族も大切だから…。だから、嘘はつきたくなかったんです。』
俺だって…
俺だって、母さんと父さんは大切だ…
でも…
恋人だと知ったら、どう思う??
悲しむ??苦しむ??辛い思いをする??
そんな思いはしてほしくない。
だけど、隠すことも、母さんたちを苦しめることになるんじゃないだろうか…
それに、昔、俺が不良だった頃…
あんなに母さんたちに迷惑かけた。
苦しい思いをたくさんさせた。
もう…あんな思いは二度とさせたくない…
「あのね、母さん。」
俺は意を決して。
口を開いた。
「あの…じ、実は、」
「お付き合い…してるのね??」
「…え??」
母さんの口から出た言葉は予想していなかったことで…
喉に何かがつまって、言葉が出てこない。
「やっぱりね。そうだと思ったわ…。」
あまりのも怖くて…
母さんの顔が見れなくて、俯く。
どういう表情をしているのか、知るのが怖かった。
「なん、で…わかったの…??」
声が震える。
そして、体も。
俺の目線の先で、手が小刻みに震えている。
俺は、それをどうにか抑えようと、片方の手でぎゅっと包み込んだ。
「なんとなくね…。たぶん、お父さんも気づいてるわ。」
「え…??」
バッと。
顔を上げると、そこにいた母さんは苦しい顔なんかしてなくて…
とても穏やかで優しい表情だった。
「雰囲気を見ててわかったの。なんでかって言われたらわからないけど…。親の勘ってやつかな。」
「何も思わないの…??」
「え??」
「気持ち、悪い…とか。」
「どうして??」
「だって…男同士なんだよ!?」
「そうねー。あたしは別に何とも思わないわ。」
「え…??」
「だって…」
するりと。
母さんの温かくて優しい手が俺の頬に触れた。
「あたしの自慢の息子が選んだ人だし。愛にはいろいろな形があるから。」
「か、さん…」
「それに、あんたにはあれくらいストレートに気持ちをぶつけてくれる子がお似合いだしね!!」
ニコッと笑って。
「別れるんじゃないわよ。あんないい子、他にはいないんだからっ!!」と。
俺たちを祝福してくれた。
あぁ…
やっぱり…
俺の母さんだな…
いつも変わらない。
どんな俺でも受け入れてくれる。
俺の自慢の母さんだ…と思った。
「ありがとう、母さん…。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
63 / 117