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夏休み-水沢家- 14
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それから、母さんは父さんと一緒にキッチンで料理を作り始めた。
俺はというと…
「夕貴は俺のだッ!!」
「いいえ、先輩は俺のですッ!!」
リビングで、この2人の争いに付き合わされている。
「母さーん、父さーん。お願いだから、この2人どうにかしてよ…。」
キッチンで仲良く料理を作っている2人に向かって助け舟を出す。
「あら、仲が良くていいじゃない。ねぇ、お父さん。」
「そうだなー。」
「……」
全然、助け舟にならなかった。
「はぁ!?こんなやつと仲がいいなんて最悪だッ!!」
「そうですか??俺は長い付き合いになると思うので、仲良くしたいですけどね。」
「あらあら。ホント、柊くんはいい子ねー。」
「なっ!!点数稼ぐな!!そして、お兄さんと呼ぶなーッ!!!」
騒がしくて、賑やかな時間。
中学時代はこんな温かい時間なんてなかった。
でも、高校生になって、家族の大切さを知ったから。
そして、篠原がいたから。
今、こうして幸せな時間が過ごせるのかもしれない。
「晩ご飯まで出来るのはまだ時間かかるから…。2人で夕貴の部屋でいちゃいちゃでもしてきたら??」
「ちょ、母さん!!何言ってんだよ!!え、つーか、2人が付き合ってるの知ってたの!?」
「えぇ、もちろん、お父さんも。ねっ??」
「あぁ。もちろんだ。」
「母さん…父さん…」
「2人は、昼ごはん食べてないからお腹空いたでしょ??すぐ作るから、二階で待ってて。」
「あ、うん。じゃあ、篠原。行こっか。」
「ちょ、夕貴!!2人きりなんて兄ちゃん許さんぞ!!」
「おい、瑛太。せっかくなんだから2人きりにしてあげなさい。」
「と、父さんまで!!」
なんとか兄ちゃんから逃げてこられて。
今は俺の部屋で篠原と2人きり。
いつもは寮の部屋だから。
今さらになって緊張してきた。
「先輩、お母さんたちに話したんだね。」
「え??」
「俺たちのこと。」
「あ…う、うん。」
するっと。
篠原の手が俺の頬に触れる。
その手はなぜか微かに震えていた。
「篠原…??」
「なんで…??」
「え…??」
「なんで言ったの??」
「なんでって…」
「だって、あんなに嫌がってたからさ…。俺たちの関係がバレるの…。」
「っ…」
気づいてたんだ…
篠原は、俺の気持ちに気づいてた…
「怖かったんじゃないの??お母さんたちに軽蔑されるのが。だから、言いたくなかったんでしょ??」
「っ…」
違う…
そんなきれいな理由なんかじゃない…
もっと…もっと汚い理由なんだ…
でも、言えない…
こんな汚い理由…
自分のことしか考えていない理由…
言えない…絶対に。
だって、言ったら嫌いになるから…
嫌われちゃうから…
自分を守るために…
自分に対しての世間体や周りの目から守るために言いたくなかったなんて…
ごめん、篠原…
こんな弱い俺を、どうか許してください…
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