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夏休み-水沢家- 15
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「お兄さんはああいう性格だから…。すぐに受け入れてくれたけど。お母さんたちはもしかしたら軽蔑するかもしれない。なのに、どうして…??」
俺は、震えている篠原の手に自分の手を重ねた。
頬が余計温かくなる。
「篠原の手…震えてる。」
「だって…俺はいいけど、先輩が傷つくから。」
「何言ってんだよ…。おまえだって傷つくだろ…」
篠原も傷つくだろ…
なのに…
なんで俺のことばかり…
どうして俺を優先するの…??
「俺も、おまえの傷つく顔は見たくない…」
「先輩…」
「それに、俺だって最初は言うつもりなかった…。」
「え…??」
「篠原との関係。でも、篠原が言ってくれたじゃん…??俺も大事だけど、それと同じくらい家族も大事だ。だから、嘘をつきたくないって…。俺もそう思ったから。大切な家族に嘘つきたくないって。もし、反対されても、何度でも話そうって。だから、言った。」
「せん、ぱい…」
「でも、言う前に気づかれてた。」
「え…??」
「俺が言おうと思ったら、母さんが付き合ってるんだろう??って。見抜かれてた。さすが、親だよな…。すげーよな、親って…。」
「先輩…」
俺の頬にあった手が背中に回されて。
ぎゅっと抱き寄せられる。
「先輩の家族は、素敵な家族ですね…」
「え…??」
「こういう家族に囲まれていたから、今のきれいな心の先輩があるんですね…。」
「何言ってんだよ…。中学のときなんか散々荒れてただろ…。」
「それでも、今こうして親孝行してる。」
「っ…」
「親のためにって…家族をちゃんと思ってる。先輩の家族が、こんな素敵な家族でよかった…。温かい家族でよかった…。」
最初は何言ってるんだろう…って思った。
でも、中学時代のダメダメな自分が頭に浮かんで…
こんなに迷惑かけたのに、見捨てないで、見放さないで…
ちゃんと…しっかりと手を握ってくれた。
離さないでくれた。
家族の絆を切らないでくれた。
だから、篠原の言葉がとても重く感じて…
俺は改めて家族の大きさに。
そして、母さん、父さん、兄ちゃんに数え切れないくらいの感謝をしないといけないんだと思い知らされた。
「次は、篠原の家族…だな。」
「え??」
「次は、篠原の家族にちゃんと話しに行かないとな。俺たちの関係。」
「っ…」
「??」
一瞬だけ。
一瞬だけだけど…
篠原の顔が歪んだように見えた。
でも、すぐにいつもの笑顔で「そうですね。」と言った。
あの歪んだ顔はいったいなんだったんだろう…
でも、今の俺はそこまで気にもしていなくて。
「楽しみだな。おまえの家族に会うのが。」
あのとき、気づいていれば…
あんなことは起きなかった…??
篠原に辛い思いをさせることはなかった…??
今の俺は、本当に無神経だった…
本当にドがつくほどの鈍感だった。
どうして…
どうして気づいてあげることができなかったんだろう…
このときの篠原の苦しみに…
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