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夏休み-水族館- 05
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イルカのショー、アシカのショーと、たくさんのショーが見れて。
最後にもう一度大きな水槽を見てゆっくりしたいという俺の要望に快く応えてくれて。
俺たちはまたベンチに座って。
ゆったり泳ぎ回っている魚たちを眺めていた。
「今日は楽しかったなー。いろんなショーも見れたし。これも、また見ることが出来たし。」
「本当にこれ好きなんですね。」
「うん。だってさ…なんか落ち着くんだもん。」
「落ち着く??」
「うん。何も考えられなくて、気持ちが楽になって…。なんか、上手く言えないけど。」
「でも、先輩が言いたいことはわかりますよ。俺もここ気に入ったし。」
「ホント??」
「うん。こんないい場所があったなら、もっと早く来ればよかったなーって。」
「そっか…。」
≪♪ピンポンパンポン そろそろ閉館の時間となります。館内にいるお客様は、お出口のほうまでお願いします。今日は水族館に来ていただき、誠にありがとうございました。気をつけてお帰りください。≫
館内放送が流れる。
もうこんな時間だったんだな…
俺はベンチから立ち上がって。
「篠原、もう帰ろっか。」
そう言って、ストールの下で繋がれている手をぎゅっと握った。
でも、篠原はベンチから立たず。
黙ったまま。
「篠原??」
顔を覗き込もうとすると、篠原が顔を上げて。
俺を見上げる。
「篠原…どうした??」
「先輩。」
「ん??」
「あの…もう少し時間いいですか??」
「え??」
「まだ、帰りたくないんです…」
「え…」
篠原の真剣な目が俺を捕らえて。
逸らせない。
ドキドキして胸が痛い。
鼓動がどんどん速くなっていく。
「で、でも…兄ちゃんから門限7時って…。今6時だから、もう帰らないと…」
「お兄さんからは俺が謝っとくから。」
「で、でも、」
「先輩。」
「っ…」
あまりにも真剣な目で。
俺を見るもんだから。
言葉が詰まって出てこない。
「お願い。どうしても、どうしても今日じゃないとダメなんだ。」
「え…」
「お願い。」
ストールの下から。
そして、繋がれていないほうも握られて。
両手にぎゅっと力が入る。
そして、俺もそれに応えるように、ぎゅっと握り返して。
「わかった。」
その一言だけ告げた。
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