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夏休み-水族館- 11
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「「ただいまー。」」
2人声を合わせて。
家の中に入る。
すると、真っ先にやってきたのは…
「夕貴!!今何時だと思ってんだ!!もう10時だぞ!?門限は7時だっただろ!!」
「ご、ごめん、兄ちゃん…。」
「べ、別に謝ってもらえるならいいんだ。でも…」
兄ちゃんは、俺を篠原から引き離して。
篠原の目の前に立つ。
「おまえは許さんぞ!!」
「に、兄ちゃん!!」
「門限は7時の約束だった。だから、2人で出かけることを許した。なのに…。」
「あ、あの…」
「こんな時間まで何をしていたんだ!!俺の夕貴に何をした!!」
「べ、別に何もされてないから!!」
「夕貴は黙ってろ!!俺はこいつに聞いてるんだ。」
「っ…」
兄ちゃんの怒った声。大きな声。
初めて聞いた。
「すみません…。約束を守らなかったのは、本当に悪いと思ってます。でも、先輩とどうしても行きたかったんです。どうしても、先輩とじゃなきゃダメだったんです…。」
「な、何の話をしてるんだ。」
篠原はゴソゴソと鞄からあるものを取り出す。
俺は、それをただただ黙って見ていた。
「これです。」
篠原が兄ちゃんに差し出したもの。
それは、夜の水族館のチケットだった。
「これ…」
「先輩が、ここの水族館が好きで、行きたいって言っていて…。それで、ネットで調べたら、これがあったんです。」
「知ってる。」
「え??」
「年に一度しかないプレミアムチケット。俺も夕貴をいつかこれに連れて行かせたかったんだ。でも、おまえに先を越されるとは思わなかったけどな。」
「す、すみません…。でも、俺もこれにどうしても行きたかった。」
「え??」
「この夜の水族館にはたくさんのイベントがあって、一番人気のイベントが恋のアクアマリン。」
「まさか…」
「はい。先輩とどうしてもこれに行きたかった。永遠の愛を誓い合いたかったんです。」
「篠原…」
俺は、篠原の横にいって。
兄ちゃんの前に立った。
「俺も、篠原と永遠の愛を誓い合いたかった。だから、俺にも責任がある。篠原だけが悪いんじゃない。」
「夕貴…」
「兄ちゃん、俺さ…篠原が初めてな気がするんだ。」
「え…??」
「こんなに好きになったのも、こんなに恋が幸せなんだって思ったのも、こんなに独占したいって思ったのも。全部篠原が初めてなんだ…。」
「夕貴…」
「俺、幸せなんだ。篠原といるのが…。だから、兄ちゃん。もう篠原を許してやってほしい…。」
「で、でもなぁ、夕貴、」
「もう、いいじゃない、瑛太。」
「「「え??」」」
兄ちゃんの後ろから声がして、覗き込むと、そこには母さんと父さんが立っていた。
「見てわからない??夕貴の顔。」
「え??」
「すごく優しい笑顔になった。中学のときよりも、すごく楽しそう。」
「母さん…」
「それに、高校に入っても全然帰ってこなかったのに、急に帰ってきて。そしたら、柊くん連れて来て。あたしに、恋人だって紹介してくれて…。初めは驚いたけど、すごくうれしかったの。」
「え??」
母さんが兄ちゃんの肩に手を添えて。
まっすぐと俺を見た。
「中学のときはあんなに距離があって。高校に入っても、どうせあたしたちへの罪滅ぼしで、あんなに勉強や生徒会をがんばって…。でも、今ではすごく近くて…。自分の息子なんだって、夕貴は家族なんだってすっごく実感するの。夕貴の知らない顔も…柊くんがたくさん見せてくれるの。」
「母さん…」
「こんないい人…いないんじゃないかしら。」
「俺もそう思うよ。」
「と、父さん…。」
「柊くんは、夕貴の全部を受け入れてくれる。これからもずっと…。」
「っ…」
「ありのままの夕貴を好きでいてくれるんだ。」
「父さん…」
母さんと、父さんの言葉が胸に染みる。
こんなに俺たちを祝福してくれる。
大切にしてくれる。
こんな親、他にはいないだろう…
こんな素敵な家族はいないだろう…
「ありがとう、母さん、父さん。」
「あの…俺たちのこと、受け入れてくれて、すごくうれしいです。ありがとうございました。」
俺と篠原は、2人で深々と頭を下げた。
なんだか、今日は本当におかしな1日だ。
本当に結婚するみたいで…
ホント、おかしな1日。
「お、俺だっておまえらのことはゆるしてないわけじゃないからなッ!!!」
兄ちゃんの言葉に、ガバッと顔を上げる。
「兄ちゃん…」
「そのかわり、夕貴を傷つけたら許さないからなッ!!!」
篠原にビシッと指を指して。
顔を真っ赤にしながら、自分の部屋へと逃げていった。
これって…
「素直じゃないわねー、まったく。」
「母さん…」
「お兄ちゃんも、ちゃんとあなたたちのこと認めてくれたのよ。」
「え…」
「すごく口が悪かったけどね。」
「に、ちゃん…」
うれしくて…
自然と頬が緩む。
篠原のほうを見ると、篠原もすごくうれしそうに微笑んでいた。
「さっ!!もう遅いからさっさとお風呂に入って寝なさい!!」
「う、うん!!」
それから、俺たちは、お風呂に入って、軽く夕ご飯を食べた。
そして、その日の夜。
2人でベッドの中に入って。
2人で抱き合って眠っているとき、篠原は俺に言った。
「大人になったら…いつかしようね、結婚。」と。
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