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夏休み-海- 07
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「ずっとって…」
「その言葉通りですよ。夕貴先輩が好きになるずっと前から好きだった。なのに、柊は夕貴先輩にしか興味がなくて…。でも、夕貴先輩にならいっかって思ってました。」
「え…」
「だって、かっこよくてきれいでケンカ強くて…。何も言うことがないくらい完璧な人で…。俺も憧れてたから。だから、夕貴先輩になら柊捕られてもいっかなって。でも…」
声色が一瞬で変わる。
穏やかだった声のトーンが一気に低くなった。
「今の夕貴先輩を見て、やっぱり渡したくないと思いました。」
「な、何言ってんだよ。あいつは俺ので…」
「じゃあ、その言葉みんなの前で言えますか??」
「え??」
「俺は柊が好きで、男同士の恋愛に偏見を持たない。それを知ったからそう言えたんじゃないんですか??」
「それは…」
「図星でしょ??夕貴先輩は本当は柊のこと好きじゃないんですよ。」
「ち、違う!!」
「違わない!!じゃあ、なんで隠すんですか??そんなに柊と付き合ってることが知られたくないですか??恥ずかしいんですか??」
「そうじゃなくて、」
「俺は、そんな夕貴先輩に柊を渡したくない。だから、俺が柊をもらいます。」
「っ…」
そう力強く言って。
俺は、篠原のところに駆け寄る薫くんの後姿を眺めていた。
すると、何かを思い出したのか、すぐに俺のほうに振り返った。
「なんか、見た感じ知らなそうだから、一応言っておきますけど、今日、柊の誕生日ですよ。」
「え…??」
「8月10日。柊の誕生日です。」
それだけ言って、またすぐに篠原のところに駆け寄る。
そして、薫くんに助けてもらいながら、やっと輪の中から出られたみたいで。
すぐに俺のところに駆け寄ってくれた。
「すみません、先輩。」
「ううん、大丈夫…」
「おい、柊!!話し聞かせろって!!」
「だから、俺と先輩だけの秘密だって言ってるだろ!!」
質問を投げかけているみんなを見ると、とても愛おしそうに篠原を見ている薫くんが目に入った。
そんな薫くんを見て、さっきの言葉が頭を過ぎる。
『なんか、見た感じ知らなそうだから、一応言っておきますけど、今日、柊の誕生日ですよ。』
その言葉に俺は図星だった。
俺は篠原のこと何も知らない。
薫くんは篠原の誕生日という当たり前のことを知っていて。
おそらく、他のことも…好きな食べ物だったり、好きな本だったり、好きな曲だったり…
当たり前のことを知っている。
でも、俺はそんなことすら知らなくて…。
そんな彼を見たくなかった。
もう、この場から離れたかった。
だから、俺は…
「ごめん、篠原。」
「え??」
「のどか湧いたから、飲み物買ってくる。」
「え、ちょ、先輩!?」
その場から逃げた。
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