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夏休み-海- 09
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こんな遠くまで来てしまった…
俺は海水浴場から遠く離れた、人気のないところに来ていた。
そこには、波の音しか聞こえなくて…
すごく心地よかった。
俺は、砂浜に腰掛けて。
波が押し寄せて、引いて…
そんなきれいな海をぼんやりと眺めながら。
薫くんが言っていたことを思い出す。
そういえば、今日って篠原の誕生日だったっけ…
お祝い…しないとな。
あ、でもプレゼント用意してない…
でも、欲しいもの何??って聞いたら、絶対、先輩って答えそうだし…
だけど、せっかくの誕生日だし…
今日くらい、あいつのわがまま聞いても…
「先輩。」
「っ…」
一番聞きたかったけど、聞きたくなかった声。
振り返りたくなくて、海に視線を向けたまま。
耳だけ傾けた。
「何??」
「なんでこんなところにいるんですか??」
「なんでって…」
「飲み物買ってくるんじゃなかったんですか??」
「あー…、ちょっと誰もいないところでゆっくりしたくて。」
「戻ろう。お兄さんが心配しますよ。」
「先に戻ってて。俺もあとで行くから。」
「先輩。」
「いいから、早く行けよ。」
「薫に何か言われたんですか??」
「っ…」
俺は何も言えなくて。
視線を海から自分の手元に移して、俯く。
「何言われたんですか??」
「別に何も…」
「何もないわけないじゃないですか。」
「だから、何もないって!!いいから、どっかいけよ。」
こんな姿、見られたくない。
こんな醜い感情、見られたくない。
こんなひどい顔、見られたくない。
「先輩。」
きゅっきゅっと音がして。
篠原が俺に近づいているのを感じた。
「来んなよ。」
そして、俺の後ろでその音が止まって。
背中に、首に。
篠原の腕が、体が密着して。
俺は、篠原に後ろから抱きしめられていた。
「離れろよ。こんなところ、誰かに見られたら…」
「いいよ、見られても。」
「俺が嫌なんだよ。」
「大丈夫。俺たちしかいないから。」
「そういう問題じゃなくて…」
「いいでしょ??ちょっとくらい。」
「っ…」
耳にかかる甘い声と甘い吐息。
背中から、首から伝わってくる篠原の体温。
それらはとても温かくて、気持ちよくて。
俺をだんだん安心させていく。
『その言葉みんなの前で言えますか??』
『じゃあ、なんで隠すんですか??そんなに柊と付き合ってることが知られたくないですか??恥ずかしいんですか??』
確かに、薫くんが言ったみたいに。
今、俺はみんなの前で篠原みたいに堂々と好きだなんて言えない。
でも…
「篠原…」
「ん??」
「好きだよ…」
篠原の前では言えるよ。
胸を張って、好きだって…
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