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夏休み-海- 19
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「俺たちにとっては確かにうれしいことだ。荒れてた頃の夕貴は本当に手のつけようがなくて、すっごく苦労した。だから、ここまでがんばってくれていることがすごくうれしい。うれしいんだけど…」
「だけど??」
「夕貴が俺たちへの罪滅ぼしでこんなにがんばっているんだってことを知って…正直胸が痛んだ。」
「……。」
「俺たちはただ、普通に楽しく学校生活を送ってほしいだけなんだ。ただ、それだけなんだ…。」
「っ…」
兄ちゃんの本当の気持ち。
初めて聞いた気がする。
だけど、俺は…
いてもたってもいられなくなって、俺はドアノブに手をかけた。
すると、その上から父さんの手が重なる。
「ダメだよ、夕貴。」
「え??」
「中に入ったらダメだ。」
「な、なんで!?」
「……。」
「父さん!!」
「2人だけでちゃんと話をさせよう。」
「だ、だけど…」
「それに…ほら、聞きなさい。」
「え??」
「柊くんの言葉を。気持ちを。ちゃんと聞きなさい。」
「っ…」
また、父さんが部屋を指差す。
俺は父さんの強い言葉に反論出来ず、父さんに従ってまた聞き耳を立てた。
「確かに、先輩は自分で抱え込みすぎることがあるから。それに俺も心臓に悪い思いをたくさんしました。お兄さんみたいに胸が痛むこともあった。でも…」
「??」
「それが先輩だから。」
「…え??」
「しの、はら…」
「言ったでしょ??そのままの先輩が好きだって。ありのままの先輩が好きだって。抱え込みすぎるところも先輩だから。そういうところも好きなんです。」
「っ…」
「それに…」
「なんだ??」
「本当に罪滅ぼしなんですかね??」
「え??」
「確かにそんな感じのことは先輩に聞いたことがあります。母さんたちにはたくさん迷惑かけたって。でも…すごく楽しそうですよ。」
「…え」
「生徒会の仕事も勉強も。すごく楽しそうです。」
「っ…」
「それに、罪滅ぼしだけであそこまで出来ないと思う。そういうことが好きじゃないと出来ないと思う。」
「篠原…」
「あれがありのままの先輩なんですよ。だから、先輩は学園中から愛される、憧れの会長さんなんです。」
「っ…」
篠原の言葉に涙がこぼれそうになった。
篠原の気持ちが俺の中に染み込んでいくのを感じる。
すると、ポンッと。
俺の肩に父さんの手がのって。
父さんの方を見ると、すごく優しい笑顔で俺を見ていた。
「ホント…いい人を見つけたな。」
「え??」
「俺たち家族が見えていなかったモノをあの子はちゃんと見えている。夕貴のことをこんなにも見ている。そんな人、なかなかいないよ??」
「父さん…」
すると、また部屋から話し声が聞こえてきた。
「悔しいけど、おまえには負けたよ。」
「え??」
「み、認めたわけじゃないけど…。い、一応おまえのことは認めてやる。」
「お、お兄さん…」
「け、決して100%認めたわけじゃないからなッ!!」
なぜだか、その会話だけが妙にハッキリと聞こえてきて。
思わず、バンッと。
勢いよく部屋のドアを開けた。
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