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夏休み-海- 20
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「ゆ、夕貴!?それに父さんまで!!」
「先輩!!」
「ホント…??」
「え??」
「俺たちのこと…認めてくれるの??兄ちゃん…。」
「っ…。ま、まぁ…。」
「っ…!!」
「で、でもな、夕貴。俺は、うわっ!!」
俺はうれしい気持ちを抑えられなくて、兄ちゃんに勢いよく抱きついた。
「ゆ、夕貴!?」
「ありがとう…」
「え…??」
「ありがとう、兄ちゃん…」
背中に回した腕でぎゅっと強く抱きしめる。
すると、兄ちゃんもぎゅっと抱きしめ返してくれて。
なんだか、うれしくて頬が緩んだ。
「たまには素直になるのもいいだろ??瑛太。」
「そ、だな…」
俺の背中から父さんの声が聞こえる。
どんな顔をしているかわからないけど…
でも、声色はとても明るくて。
2人で聞き耳たてていたときに見せた父さんのあのひどく悲しそうな表情は俺の中からきれいに消えていった。
たぶん、それも全部…篠原のおかげ。
でも、そんな余韻に浸っている時間もなく…
「うわっ!!」
兄ちゃんの背中に回していた腕をグイッと引っ張られて、誰かの胸に体を預ける。
顔を上げると、そこには愛しい人の顔。
「し、篠原!?」
「ちょっと、どれだけ抱き合っていれば気が済むんですか??さっさと離れてくださいよ、俺の先輩なんですから。」
「な、何言って、うわっ!!」
すると、次は反対の腕をまたグイッと引っ張られて。
次は誰かと顔を上げると、兄ちゃんだった。
「はぁ!?誰がおまえのだって!?勘違いすんなッ!!夕貴は俺のものだ!!」
も、もしかして…
また始まった??
そのもしかしてが命中して、2人に両腕を引っ張られる始末。
「何言ってるんですか!!先輩は俺のです!!」
「はぁ!?お・れ・の・だッ!!」
「ちょ、いいから離せって!!いてーよ!!」
「まぁまぁ。賑やかで楽しそうねー。」
俺たちの声に引きつられたのか、ゆっくり歩いて部屋に入ってくる。
頬を緩ませて、すごく楽しそうに。
「か、母さん!?」
「そうだなー。」
「と、父さんまで!?…ちょ、やめろって!!」
あれからずっと。
あの2人の闘いは終わることを知らないくらい続いて…
俺にすこぶる迷惑がかかったのは言うまでもない。
―――― ―― ―
「それじゃあ…お世話になりました。」
「また遊びに来てね、柊くん。」
「はい。」
「夕貴ー。行かないでくれよー。帰らないでくれよー。」
「兄ちゃん、無理だから…。母さん、父さん、体には気をつけてね。」
「夕貴もな。」
「うん。」
「またいつでも帰ってきなさい。」
「うん。ありがとう。兄ちゃんも元気で。」
「篠原とばっかじゃなくて、俺にもちゃんと連絡しろよ??」
「わかってるって。じゃ、またね。」
「お世話になりました。」
「またな、夕貴。」
「元気でね。」
「連絡、いつでも待ってるからな!!」
みんなに背を向けて、ドアノブに手をかけて。
ゆっくりと扉を開く。
楽しかった帰省も篠原とのデートも。
この扉の向こうに行けば終わりだけど…
俺の心はとても温かくて、ポカポカしていて。
この気持ちもこの思い出も。
俺にとっては大切すぎるくらい幸せな気持ちと思い出で。
絶対に忘れない。
こんな大切なこと…絶対に忘れない。
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