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出会い
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薄暗くて線香臭い室内。
聞こえるのはすすり泣く声と哀れみの言葉だけ。
「可哀想にね。まだ小さいのに…」
「そうだな…それよりも、どの家があの子を引き取るんだ」
「可哀想だけどうちはちょっと…」
「私の家も…」
みんな僕をチラチラと見ながらそんな話をしている。
そんな視線と言葉が僕に突き刺さり丸裸にされたようで酷く屈辱的だし恥ずかしい。
辛いよ。
ドウシテ?
何で僕のことを置いていってしまったの?
ねぇ、父さん母さん…
帰ってきてよ。
「うっ………アァァァァァァッッッ!!!!!!!」
酷い怒りと寂しさに身を任せ叫び声を上げた。
僕が叫ぶとさっきまでヒソヒソと聞こえていた声も止まりシーンと一層静まりかえった部屋。
世界から音が消えたのではないかと錯覚してしまう。
コツコツコツ………
そんな音のない世界の奥から突然沈黙を破る音が聞こえてきた。
どんどんどんどん音は大きくなってきて。
やがてその音は僕の背後で止まり大きな何かが僕のことを包んだ。
その何かはとても温かくて気持ちがいい。
「大丈夫だから……俺が守るから…」
耳元にかかる生温かい息と優しく響いた声。
僕は男の方を向かずにただただ涙を流していた。頭の中が混乱してしまって状況もわからないのに溢れてくる涙。
男は背中から僕のことを抱きしめたまま涙で濡れた僕の顔を服の袖でゴシゴシと荒く拭き「ちょっと待ってろ」と言って突然立ち上がった。
「ここにいる奴ら聞けっ!!!こいつは俺が育てる。今日からこいつの父親は俺だ!」
そしてその男は俯く僕の顔を両手でぐいっと上に向かせ、しっかりと目を見つめながらニカっと大きく笑い突然抱っこをして薄暗い部屋から連れ出した。
「行くぞっ!!」
僕は何がなんだかわからずひたすら黙りながら頷いていた。
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