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出会い、そして今
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埋まらない喪失感を持て余して、路地裏に蹲る。
クロエは俺を救ってくれた。燮とのしがらみをほどいて、凍りついた時を動かしてくれた。
けど、あいつがいるのは俺の隣じゃない。それがわかったから。やっぱり俺じゃあクロエの一番にはなれねぇし、あいつの幸せは俺の隣にいることじゃない。だから、クロエは燮のところに帰って行った。
一人の部屋が、がらんどうで殺風景でつまらなくて。まるで俺を責めているかのように感じられた。結局、俺は路地裏に戻ってきてしまう。よく燮に飯をたかりに行ったり話せるようにはなったが、それだけだ。
路地裏の、硬く冷たいレンガが俺の居場所だと実感させてくれる。
酔ってもいねぇのに涙が零れる。
ああ、やっぱり、俺はどうあがいても幸せにはなれねぇんだ。
いっそ救われなきゃよかったんじゃねぇかとかいう馬鹿な思考を打ち消す。
溜息とともに嗚咽が漏れる。それはやがて、乾いた笑いに変わった。
ああ、俺は、どこに行っても結局ひとりぼっちなんだな。
そんな時だ。俺があいつ……ラフルと出会ったのは。
女みてぇにかわいい。
ラフルを最初にみた時の印象だった。にこにこして、俺に敵意を抱かず、ずっと欲しくて焦がれていた優しい言葉をたくさんくれた。
でも、同時にどこか、何かが気になった。
「俺は、クズな奴だから」
何かを諦めてるような言葉に、ひっかかりを感じた。燮じゃあるまいし、自分でもよくわからないが気になって気になって、それのどこが幸せなんだって、思わず突っかかって。
どこか、ラフルの姿が昔の俺に似ていたんだ。
戦闘中に意識が飛んで、気がついたら敵味方関係なくぶっ飛ばしてぶっ壊していた。化物扱いされてずっと孤独でひねくれて、仲間なんて邪魔だと思ってた頃の、歪んで荒み切っていた俺の姿が、ラフルに重なった。
こんなに突っかかって構うなんて、燮じゃあるまいし、と心の中で呟く。
無理してるのが見え見えで笑ってる姿に胸が締め付けられる。昔の、俺じゃねぇか。
こんなことをしていても、いずれ後悔する。少なくとも俺はそうだった。せめて目の前にいるこいつにはそんな思いはして欲しくない。
……いや、そんな建前なんかだけじゃない。
かわいいと、思った。俺の一言一言で、赤くなったり、楽しそうに笑うラフルが、純粋にかわいいとおもったんだ。笑顔の仮面じゃなく、心の底から笑って欲しいと思った。
それがどんな感情かはまだ分からなかったが、とにかく、目の前で本心を押し隠して笑うラフルが我慢ならなかった。
……すごく、酷なことをしちまったと思う。抵抗するに決まってるし、否定して俺らしくもなく説教して。
だから、俺の思いがきちんと伝わったみたいで本当に安堵した。帰り際にされたキスの感触を、俺はずっと忘れないだろう。
***
「トール、ただいまっ」
後ろから手が伸びてきて、俺をぎゅっと抱きしめる。
「おかえり、ラフル」
自然と、唇が重なる。ラフルに咥内をかき混ぜられ、舌を吸われ頭が真っ白になる。ラフルはキスが巧い。キスが終わる頃には力が抜けて骨抜きにされて、あとは美味しく頂かれるだけになっちまう。
「何、考えてたの?」
俺の上に馬乗りになったラフルは普段より低いトーンで俺に問うてくる。……想像の中の何者かに嫉妬、しているのだろうか。
「初めて会った時のことを、よ。……キスして逃げやがって、全く」
「だって、あれは……!」
途端に真っ赤になるラフルが愛おしくてたまらない。ぎゅっと抱きしめると、額にキスが降ってきた。
「トール、シよ?」
「……どっちにするんだ?」
たった一言だけで伝わる秘め事の合図。
「今はトールを抱きたい、かな。途中で交代してもいいよ?」
「決まりだな。ちゃんと代われよ?」
「それはトール次第かなー。だって、この間結局その約束でかわいく喘いでもっともっとって」
「あーあーあー!何も聞こえねぇ!聞こえねぇから!」
ラフルの言葉を大声で遮る。……確かにそんなこともあった。ラフルが巧いからいけねぇんだと責任をなすりつける。ベッドへ向かうために起き上がろうとしたのだが、俺の上に乗るラフルが離してくれない。
「だーめ。ベッドへ行く時間も惜しいから、ここでシよ?早くトールを可愛がりたいなー」
「……ったく、仕方ねぇな」
「やったー!ありがと、トール!だーいすき」
ああ、もう、本当に、俺はラフルに弱い。
服を剥がされながら、二人で過ごす幸せさを噛み締めてこっそりと笑った。
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