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Cage-005
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「ほんと、どこに行っちまったんだろうな」
ボリボリと頭を掻きながら、トールは呟いた。調べてみても、燮の痕跡は一切掴めず、わかったのはクロエがたまに外をうろついているということだけ。しかも食料調達のためか市場で、かつごく短時間の目撃情報のみだ。地図の目撃された場所に、印をつけるトール。ラフルは地図を覗き込んだ。なにか思いついたのか、ラフルはトールに問いかける。
「ねぇ、トール、クロエさんってどんな戦い方するの?」
「あいつか?あいつは銃と魔法を使って戦うな。異次元から燃えてる巨石落とすとか、ブラックホールで足止めするとか……あとワープしたりもするな」
性格はともかくとして、クロエは優秀な魔法使いだ。時空間を操り戦う変則的な魔法を扱う。
「……それって、応用きかないかな。クロエさんがワープしたどこかにさ、」
「燮の奴がいる、ってことか……。確かにあり得るな。そういえば、『ドアを開けて、空き家の中に入って行くのを見た』って証言があったんだ。しかもそのあと中には人影ひとつなかったらしい」
「うん、きっとドアからワープしてるんじゃないかな。……場所を特定されないため、かな」
ラフルの顔が曇る。誰にも邪魔されない場所で、クロエは燮と一緒にいるのだろうか。
本で読んだが、フォリ・ア・ドゥ……二人狂いという症状がある。妄想を持った精神病者と結びつきの強い正常者が、外界から影響を受けずに生活している時、その妄想を受け入れ共有してしまうことがある、という。
……もし、クロエと燮が同じ世界観を共有してしまったら?クロエの笑顔が薄れて行くようなイメージが、ラフルの脳内をよぎった。クロエがどこかおかしかったのは知っている。燮とともにその世界観に閉じこもってしまったら……。
「トール、なるべく急いだほうがいいかもしれない」
なるべく簡潔に、ラフルは自分の思った可能性をトールに説明した。クロエの世界観に、完全に燮が飲み込まれてしまったら。二人はもう二度と外の世界と繋がりを持とうなどと思うことがなくなってしまうかもしれない。
「二人狂い、か……。そう、だな。なんとかしてクロエを捕まえて、燮のところに踏み込むのが理想だな」
「市場にもっと情報提供のビラを配って、張り込みしよう。……俺、クロエさんと会えなくなるの嫌だから」
「そりゃ俺だって一緒だ。ったく、燮の奴、見つけたら一発殴ってやらねぇと」
「俺も、会ったらちょっと色々言いたい、かも」
クロエはまるで、硝子細工のようだ。二人は口を揃えて言う。繊細で、脆くて、しかしそれを見た目からは感じさせない。そんなクロエをここまでさせる燮に、我慢ならないのだ。
二人はやおら立ち上がる。何を言うでもなくただ頷きあい、行動を開始した。
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