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Cage-008
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朝日の光が顔に当たり、燮は目を覚ました。
隣を見ると幸せそうな顔ですやすやと寝息をたてるクロエがいる。思わず笑みがこぼれた。
そっと手を伸ばし、頭を撫でる。銀の髪は柔らかく触り心地がとてもいい。しばらくそうして、クロエの寝顔を堪能していた。
ふと、クロエの瞼が持ち上がり赤と金の色の違う瞳が、燮を映す。朝日のなか、そっと微笑んだクロエはどこか神々しさすら感じさせる。
「……おはよう」
「おはようございます、ショウさん」
挨拶を交わし、なかなかベッドから起きる気になれない二人はそっと手を繋ぐ。自然と顔が近付き、口付けを交わす。触れるだけの軽いものから、貪るような深いものに変わるのにさして時間はかからなかった。
しかし、クロエとともにあの部屋に入ってから二週間しか経っていなかったことに驚きを覚えた。とはいえ燮もクロエも、記憶と時間感覚がひどく曖昧で、かつあの部屋とこの世界では時間の流れが違うかもしれないということを考えると実際にはもっと長い間いたのかもしれないが。
「……ショウさん」
「どうした?」
「夢じゃ、ないんですよね?」
「当たり前だろう?」
燮を抱き締めて嬉しそうに微笑むクロエの首筋にはひとつ、真新しい鬱血の跡……所有印が刻まれている。クロエは静かに燮の逞しい首筋に顔を埋める。ちくりとした痛みとともに、燮の首筋にも、紅い鬱血の跡が刻まれた。燮はどこか嬉しそうにその鬱血の跡を撫でる。
「なあ、クロエ」
「はい…?」
「……これからは、もっと我儘を言って欲しい。嫉妬したとか、もっと近くにいてくれとか、きちんと言って欲しい。遠慮するな。……な?」
「!っ、はい……!」
「要らない気は遣わなくていい。もっと素直になってくれ。……な?」
囁くように言われたその甘く優しい言葉にクロエの頬が朱く染まる。燮は頷いて抱きついてくるクロエの背中を優しく撫でた。
クロエからは見えないように、燮は抱きしめながら唇の端を歪める。その瞳にありありと浮かぶのは激しい執着。しかし、クロエが燮の顔を見た時には、いつもの燮に戻っていた。
「朝ごはんは、サンドイッチがいいです」
「……ああ、わかった。コーヒーでいいか?」
「はい!」
二人でベッドから起き上がる。クロエはシャワーを浴びに、浴室に向かう。キッチンを出禁にしたのは燮のほうなので何も文句は言わない。下手に手伝わせて魔法でも使われてキッチンを爆破されるよりはずっといい。それに、燮にとってキッチンは一人で考え事をする貴重な場所なのだ。
見た目から美味しそうな、サンドイッチが何個も何個も作られて行く。コーヒーは豆だけをセットして、クロエがシャワーを浴びて出てくるのを待つ。
不敵な笑みを浮かべる燮は、クロエにはその姿を見せることはない。静かで激しい執着は、燮に新しい一面を作り出した。
クロエが戻ってくると、燮はにこやかな顔をしてコーヒーを淹れていた。サンドイッチは既に出来上がっており、コーヒーの香りとトーストの香りが混じった朝食らしい香りが鼻をくすぐる。
「食い終わって片付けたら、買い出しに行こう。ハンバーグと…唐揚げだったか。トールたちも食いに来るんだ」
「はい!うふふ、楽しみですね…」
にこにこと笑うクロエの頭を撫で、燮はともにテーブルに座る。ともに朝食を食べることが、なんだかとても新鮮に感じるのは二人の関係性が変化したからだろうか。談笑しながら食べるクロエは、燮の変化にどれだけ気付いているのだろうか。他人に聡いクロエだが、燮には盲目なように思えてならない。
だからこそ……燮はクロエには自分の中のどす黒い一面を晒したりなどしない。クロエには見せたくないのだ。こんな、醜い怪物を。
「ショウさん?どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
やはりクロエは聡い子だ。
クロエの笑顔を見ながら、その事実を再確認し燮はそっと、唇の端を歪めてみせた。
Cage Fin
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