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The last days-002
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独裁者が騎士団に口を出し始めたのは、俺が騎士団に入ってからたいした時間は経ってなかったよ。
騎士団は、独裁者を守ることが国を守ることだっていう狂信者か、うまい汁吸いたいボンクラか、民を守らない騎士団に何の意味があるんだっていう反抗者か、っていうみっつに分かれたんだよ。どっちつかずもいたけどそれはどうでもいい。
俺は一番最後のだ。……俺は、昔からそのためだけに騎士団にいるんだ。その意味を取り上げられたら、どうしていいかわからねぇ。
すげぇ少数派だったから、なのか。目ぇつけられちまって。何人かそういうのはいたのは知ってたけど、そいつらとつるむ気もなかったし。
……いつだったか、よく覚えてねぇんだけど。戦ってたら急に、首筋が熱くなって、何かが弾け飛んで、さ。我に返った時には、その場で生きてたのは、俺だけだったよ。
今でも覚えてるさ。死んだ奴の目は、全部俺を向いてた。そんで、恐怖に凍りついてた。状況的に、どこかでわかってたさ。認めたくはなかったけど。近くで、逃げた奴が、叫んだんだ。
『バケモノ』って、よ……
俺が、敵も味方も関係なく、全員殺したんだ。
……それからは、上からの扱いは殲滅兵器だったよ。味方ひとりいない戦場に放り込まれて、全部をぶち壊す。
そのうち、楽しくなってきてよ。俺が我に返った時に、一体どれだけのもんが壊れてるのかって。
ははっ、嘘だな。……愉しまないと、やってられなかった。
怪我も沢山したさ。けど、骨が見えるくらいまでやられねぇ限り、次の日にはすっかり塞がって、ほんと、バケモノじみてた。
それに、この頃にはもう、痛覚は感じなかったな。だから怪我しても気にせず寝ちまう。それであの回復力だからよ、バケモノ扱いされても仕方ねぇ。
性的興奮…は、戦場にいれば別にそんなことどうでも良くなるから、同じ時期に失ったのか、違うのかはよく分からねぇんだ。
俺が騎士団から出て行く一年くらい前だから大体三年前くらいか。味方が逃げ遅れたのかなんなのか、よく覚えてねぇけど。俺が我に返った時に、俺を見てた奴と目があったんだ。お前も知ってるだろ、そいつが、燮だったんだよ。
「トール……」
どんどん沈んでいくトールの声にラフルは気遣わしげに見つめることしかできない。トールは深くため息をついた。
「大丈夫?」
「ああ」
「今のトールは、バケモノじゃないよ」
「……ああ」
トールに深く残ったバケモノという烙印。バケモノと言われ続け、自分でもそうだと自嘲し、やけになっていた。バケモノじゃないと、はっきりとトールに言ったのはラフルが初めてだった。
化け物じゃない。その言葉はトールを救うに十分なものだった。だが、その前まで言われ続けた言葉の鎖は過去を後悔するトールをずっと縛り付け苦しめ続けている。
「……続き、いいか?」
「うん、でも、無理はしちゃ駄目だよ…?」
トールは頷き、少しずつまた語り始めた。
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