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The last days-003 ※R-15
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燮の話、だったな。
あいつのことは、昔から知ってたよ。俺と同じくらいに騎士団に入ったんだけどよ、周りには常に人が集まって、考え方は俺に近かったけど、あいつには味方がたくさんいた。……羨ましい、ってより妬ましかったよ。
そいつが、あの、敵味方関係なく全員ぶち殺したあの戦闘以来、よく俺に話しかけてくるようになったんだ。調子はどうだとか、この間の傷はどうしたとか、今日の配備の場所はだとか、よ。
正直物凄く鬱陶しかった。なんていうか、本当にどう対応していいかもわからねぇし、荒んでた俺には、あいつが眩しすぎて、殺意すら覚えた。
だからよ、構われねぇようにするにはどうしたらいいかとかよ、ずっと考えてた。
……それで思いついたのが、あいつのプライドを傷つける、ってことだったんだよ。あとあとになって考えてみれば、ほんとゆがんでたよな、俺。
だから、俺は燮を呼び出して……強姦、したんだ。もう快感とかなかったけど、あいつの屈辱的な顔とかは、すげぇ興奮した。録音とかまでしてよ、逃げられないように、って。そんなふうに、身体の関係を何度も強いた。それから、目を合わせることもなくなったな。ざまあみろ、偽善者が。って、その時は胸がすっとしたんだよ。
……それから少しして、あいつ、やめちまったんだ。騎士団をよ。ま、目の上のタンコブがとれたみてぇな、そんな感じだったけど。結局、俺はまだ、騎士団をやめずに、破壊兵器扱いで戦ってた。なんかずっとモヤモヤしててよ。それを吹っ飛ばすために、拳をふるってたっていうか。
それでも、結局俺の戦い方じゃやりすぎだってんで、給金だけちっと出されて、追い出されちまったんだ。
……目の前が真っ暗になるってのは、こういうのを言うんだろうな。なんてったってよ、俺は目的を失ったんだ。まあ、目的云々の前に、騎士団は国民を守るんじゃねぇ、傷つけて、独裁者を守るための機関に変わっちまってたけどよ……。
弱い人を守る誇り高い騎士団なんて、もうどこにもなかったけど。……それでも俺の居場所も、理想を実現するために戦える場所も、その時の俺にはそこしかなかったんだ。
それからは、ほんとすげぇ荒れてたな。酒場に入り浸って、酒に溺れて……そんで、女のところ出入りして。たまに、割れるような頭痛で我に返ったら、周りの人間が全部死んでたりもした。なにがあったか、全然覚えてねぇけど。
……だから、たまにお前に触るのが、すげぇ怖くなるし、触れ難いと思うんだ。俺の手はよ、未だに血がべったりついててとれねぇ、そんな錯覚に陥るし……お前をいつか、この手にかけちまうんじゃないかって、すげぇ怖くなる。そりゃ、俺だってお前だって、互いになら殺されたっていいって思ってるけど……そうじゃねぇんだ。俺が我を忘れて、気づいた時にお前の残骸が、俺の目の前に転がってたらって思うと、すげぇ怖いんだ。
ぐい、とトールは置いてあった水を飲み干した。
その目には怯えと疲労の色が色濃くある。ラフルはそっと、トールの大きな掌を己の手で包み込んだ。
「大丈夫だよ。俺は、トールを残して死んだりしない。それに、トールの手は大きくて安心できる優しい手だから、むしろもっと触って欲しいな……ってさ」
「……いいのか?」
「いいも何も。お願い、触って、安心させて?」
ラフルの言葉に、トールの中の感情の堤防が決壊した。ほろり、と一筋涙が流れ、くしゃりと顔が歪みその大きな手は何度か逡巡したのちに、ラフルの顔を包んだ。顔の輪郭を愛おしげになぞり、腕が肩を滑り手は背中にまわされる。そしてきつく抱きしめた。
「ラフ、ル……おれの、ラフル……」
ラフルからはトールの表情は窺えなかったが、震える肩と水分を含んだ声に、きっと嗚咽を漏らしているのだろうと想像できた。くるしそうに、しかし愛おしげに名を呼ぶトールの背中をラフルは優しく撫でる。
「……大丈夫?今日はもう、やめる?」
「いや、大丈夫だ。あともう少しだからよ。聞いてくれるか?」
「勿論。…聞かせて」
トールは静かにラフルを見て、ややして口を開いた。
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