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31.✧苦しいこと
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✧✧✧✧
旭の部屋にお茶でも淹れて持っていこうかな、と思った矢先、メッセージの受信を告げる音が鳴った。
《市倉です!今日、学校で旭見ましたよ!元気そうで良かったです!》
見ただけで話しかけなかったのかよ、と思いつつ面倒なのでスタンプ一個だけで返信する。すぐに既読が付いた。
《反応薄いですね……。あ、そうだ。今度一緒に飲みに行きません?》
〈なんで?〉
《えぇー、ひどい!オレ、平坂先輩とお話したいんですよぉ〜!》
〈酒、弱いから無理〉
弱いというのは半分嘘。
俺はあんまり酒を飲まないから弱いかどうか分からない。
だけど、前に家で兄貴にさんざん飲まされた時、酒に強い兄貴に朝まで付き合っていられたから、どちらかと言うと強い方だと思う。
《酒弱いとか可愛いですね。それなら少し飲むだけでいいですから!ね?》
〈可愛いは失礼だろ……。忙しいから無理〉
《時間ある時でいいんで!!いいとこ紹介しますよ~》
ここまで言って引き下がらないのなら、何を言っても無理な気がしてきた。半ば投げやりな態度で返信する。
〈分かった〉
《マジですか!!やったー!!空いてる日とかあります?》
〈平日の夜なら大体空いてる〉
《了解でーす!また連絡しますね!俺、楽しみにしてますから!》
昼間は向こうが空いてないだろうと、一応気を遣って時間を指定すると軽い返事がきた。やたらとハイテンションな奴の相手をしたせいか画面越しだったけど少し疲れた。
柚里はまだいるのかな。とりあえずお茶でも持って行こう。旭も柚里も紅茶が好きだった事を思い出して紅茶にした。
旭の部屋の前まで来ると、まだ柚里もいるようで微かに話し声が聞こえた。
立ち聞きする気なんてないからそのままドアをノックしようとすると、その前にドアが開いて柚里が出てきた。
「……あら、楓」
「どうしたのユズ?旭と何かあった?」
「いいえ、何もないわ。帰るわね」
柚里は目も合わせずに「お邪魔しました」とだけ言い残して玄関から出ていってしまった。……紅茶、無駄になっちゃったな。
そんなことを考えていると、柚里に続いて部屋から泣きそうな顔をした旭が出てきた。
「楓さん……」
「旭?どうした?」
「ううん、なんでもないよ。……ごめんね、楓さん」
そう言って横から抱きついてきた旭は苦しそうな表情をしていて、どうしたのか聞いたけど何でもないと首を振るだけで答えてはくれなかった。
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