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51.✩最低
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✩✩✩✩
市倉に連れて来られた場所は今朝も柚里と来たカフェだった。ちょうどお昼の時間で人がたくさんいるから、ここなら市倉も俺に何かすることはできないだろう。
「ねえ、平坂先輩って何の仕事してんの?」
「…………知らない」
「あれ?和泉って先輩と仲良かったよな?ああ、もしかして、関係が薄くなった感じ?」
「…………」
俺の無言を肯定と受け取ったらしく、市倉は機嫌良さげに笑った。どういう意味だよ。
なんか、市倉といると無性にイライラする。それはきっと、『和泉旭』は楓さんの全てを知っていて当たり前、みたいに話しかけてくるから。俺の記憶がないことを知っていて、わざとそういう風に聞いてきてるのが言葉の節々に感じられる。
「オレね、平坂先輩の事好きなんだ」
「…………」
視線を合わせないようにしていたのに、その発言に驚いて市倉の顔を見ると市倉はニコッと笑った。こいつ今、自分から楓さんが好きだって言った?なんで俺にそんなことを言うんだ。
「柚里から聞いてるだろ?オレが先輩の事を恋愛対象として見てるって。それ、本当だよ」
テーブルに肘をついて身を乗り出した市倉は、さっきまでの笑顔を消して真顔で言った。
「あの人、すごい綺麗な顔してるよな。顔以外も全部綺麗。この間会った時も全然変わってなくてさぁ。ほんとあの人、どストライクなんだよね」
「…………」
「先輩を自分のモノにしたくてしょうがない。自分の手で先輩をどろっどろに溶かしてやって、オレしか見られないようにしてやりたい。俺に組み敷かれて善がる先輩が見たい。逆もいいね。平坂先輩にされるならオレが下でもいい。それくらい先輩を愛してるんだ」
つらつらと楓さんへの想いを語る市倉は終始笑顔だったけど目がギラついていて、なるほど危険だと思った。だけど、市倉が本気だからといって、俺が引こうとは思わなかった。
俺だって楓さんのこと好きだし……。
「……それを俺に言ってどうすんの?」
「んー、どうもしないかな。ただ、オレと平坂先輩の邪魔はするなよ。もしそんなことしてきたら先輩をブチ犯すからな」
「……最低だな…………」
完璧な真っ黒い笑みを浮かべて市倉は立ち上がった。話したいことは終わったらしい。これ以上気分が悪くなるのは嫌だし、もう二度と話したいとも思わないけど。
俺も立ち上がってカフェから出ようとすると、市倉は何を思い出したのか口を開いた。
「あ、そうそう。お前記憶喪失なんだってな?良いこと教えてやるよ。平坂先輩、男もイケるんだってさ」
これって俺にも勝機あるよね、と市倉は俺を見下したように言ってカフェから出ていった。
「……え、なに、どういうこと……」
衝撃的すぎて市倉が去った後も、俺はしばらくその場から動けなかった。
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