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96.✩気にくわない
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✩✩✩✩
「気にくわない………」
「まだそんなこと言ってるの?」
「あ、え、楓さん!………声に出てた?」
「うん。そんなにキスマークのこと引きずってるの?」
シーツを抱えた楓さんが洗面所に入ってきた。
きっと楓さんは、まだ俺がキスマークのことを気にしてるって思ってるんだ。
だけど俺が今気にくわないのは、楓さんとあの男の関係がはっきり分からないこと。
だけど『楓さんと一緒に裸で写真に写ってた男って誰?』なんて、さすがにこれは本人に聞けるわけがない。
「………もしかして、キスマークが気にくわないってわけじゃない?」
「ああ………えと………うん、そう」
俺の気がキスマークから逸れているって楓さんが気付いたことに内心驚いた。
楓さんは俺のちょっとした表情の変化にも敏感だ。勘なのか俺の考えてる事が本当に分かってるのか定かではないけど、こうやって楓さんが気付いてくれるのは嬉しい。
気付いてくれて、俺の悩みや不安なことを取り除こうとしてくれる。
嬉しいけど今回のは絶対に聞けない。
このままだと何が気にくわないか吐かされるのも時間の問題だろう。別のことに話題を変えないと。
何かないかと考える。
ふと、昨夜の楓さんとの会話を思い出した。
いろいろ質問した中で、楓さんは明日、つまり今日、自分の仕事について教えてくれるって言っていた。
「昨日の夜さ、楓さん、職業教えてくれるって言ってたよね?」
「うん、言ったね」
「………今じゃ、駄目?」
「今?」
いかにも楓さんが仕事を教えてくれないのが気にくわない、的な感じで聞く。まあ、これも気になってたことだし。………バレてない、よね?
楓さんは一瞬きょとんとしていたけどすぐにいつもの笑顔に戻った。
「いいよ。洗濯してる間に教えてあげる。ただし、あんまり期待はするなよ?」
「ありがとう!すっごく楽しみ!」
軽くたたんだシーツを洗濯カゴに入れて楓さんは洗面所を出て行く。
よかった、多分バレてない。
きっと、さっき考えていたことを問えば楓さんはちゃんと答えてくれる。
でももう、あの写真から"そういう関係"なんだって分かりきってるようなものだし、あの男と楓さんの関係を直接聞いたら、俺は苦しくなる。
過去のことだ、って願ってるけど、もしまだ続いてたら………?
わざわざ聞いて辛くなるのは嫌だ。
………大丈夫、楓さんの恋人は俺なんだ。
俺は一度深呼吸して心を落ち着けてから楓さんの後を追った。
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