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115.✧姉
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✧✧✧✧
旭と静輝のことを話してから三日経った。
仕事部屋に飾ってあった静輝の写真は全てアルバムに入れて、空いたスペースには旭の写真と旭が描いた絵を飾ることにした。別に捨ててもよかったんだけど、捨てようとしたら旭に『思い出の一つなんでしょ?だったら捨てないで』と言われてしまった。
記憶もろとも思い出を無くしてしまった旭の言葉を蔑ろになんてできなくて、静輝の写ってる写真は結局アルバム行きになったというわけだ。
旭は『悩みがなくなったんだから、わざわざ写真を片付けなくていいのに』と言っていたけど、個人的には四六時中どこでも旭に囲まれていて、仕事は捗るし気分は最高だしいい事だらけだった。本当に旭のことが好きなんだとひしひしと実感していた。
そんな中スマホの着信音が鳴ったのは、寝る前に旭とソファーで微睡んでいる時だった。
隣でうとうとし始めた旭を見てそろそろ寝ようかな、と思っていたら電話がかかってきた。
こんな時間に誰だよ、と画面を見るとよく知っている名前が表示されていた。
「………はい」
『もしもし、楓?私だけど~』
「………眠いから、用件早く」
『もう、つれないなぁー』
電話口できゃいきゃいはしゃぐ女の声が聞こえたらしく、眠そうにしてた旭がぴくりと反応した。
スッと立ち上がった旭の視線は寝室の方を向いていた。気を利かせてリビングから出ていくつもりなのか。
旭の腕を掴んで再びソファーに座らせると、旭は困ったように俺を見た。
「か、楓さん……俺、先に寝室行ってるよ?」
「ここにいて。ちょっとうるさいと思うけど…」
「ん………分かった」
旭の事だ。どうせこんな電話一本でまたぐるぐる悩み出すだろう。
俺は電話の内容が分かるように旭を引き寄せた。
さすがに関係のない自分が聞き耳を立てるのは良くないと思ったのか旭は離れようとしたけど、肩を抱いたままでいる腕の強さにそのうち諦めた。
『楓ー?ちょっと聞いてるの?』
「聞いてるよ。で、何の話してたっけ?」
『聞いてないんじゃん!お姉ちゃん悲しい!』
電話の相手は俺の姉だった。
三人いる姉の中で、電話をかけてきたのは三女の桜だった。
『私、一週間後に日本に戻るから』
「えっ」
『ふふふ、楽しみにしててね~?』
そこで電話はブツリと切られた。
桜姉がこっちに戻ってくる?
しかも、一週間後?
一人混乱する俺を、何も知らない旭は不思議そうに見ていた。
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