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117.✧俺だって
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✧✧✧✧
平坂家の三女・桜は、とにかく旭を溺愛している。
他の二人の姉も旭を可愛がってはいるけど、桜と比べたら霞んで見えるほどだ。
まあ、桜姉も俺と比べたら霞むけど。
桜姉の溺愛っぷりは実の弟である俺がドン引きするくらいで、帰国する度にあれこれと旭の世話をやいている。
正月に一度帰国した時も、実家にはほとんど顔を出さずにこのマンションに入り浸って旭を構い続けていた。
旭も旭で、まんざらでもないというか、桜姉が自分を一人占めする事に少し妬いている俺を見て楽しんでいるようだった。今の旭は俺が妬いてるの見て楽しむとか、そんな事しないだろう。随分と素直でいい子になったしな。
それに、きっと今の旭が持っている俺のイメージは、そんな些細な事で嫉妬したりしない"大人"だ。残念ながら俺はそこまで精神的に大人じゃないし、自分の恋人を半ば取られている状態なんて、かなりイラッとくるわけで………。
俺だって心がある生身の人間なんだから、嫉妬の一つや二つくらい普通にする。
俺のそんな子供っぽい一面を知らない旭は、『取られるから』と言われた意味がよく分かっていないようできょとんとしていた。
「取られる?俺がお姉さんに?なんで?」
「なんでも」
「………取られないよ?俺、楓さんのだし」
旭は本当に意味が分からないといったように少し首を傾げて言う。眠いらしく目がとろんとしている。
こうやって俺が悶えるような言葉を口にするくらい素直すぎるのもどうかと思ったけど、可愛いから良しとしよう。
「例えばね、旭がいる所で俺が他の人と仲良く寄り添って飯食ったり、ベッドで一緒に寝てたりしてたらどう思う?それが女の人なら、なおさらどう?」
「どう、って……。楓さんが、他の人と………、しかも女の人……やだ、無理、だめ」
「ね、そうなるでしょ?俺も同じ。桜姉が来ると、旭はあいつばっかり構うから嫉妬するんだよ」
「でも、俺は、その……お姉さんのこと忘れちゃってるから、そうはならないと思う、けど……」
旭の言いたい事もまあ分かる。
記憶とともに旭の中では関係もリセットされて、旭にとって桜姉は今や幼馴染みでもなんでもない赤の他人も同然だ。姉たちからの無駄な入れ知恵がない分、その心配もいらないっちゃいらないだろう。
だけど相手が相手だ。
おそらく桜姉は、旭の記憶がぶっ飛んだくらいじゃ諦めない。桜姉がそういう人だとよく知っているから一段と心配だった。
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