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132.✧知りたい
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✧✧✧✧
「もう、ほんとに……やだよ、こんな………」
俺から目をそらしながら涙を流す旭は、何かに押しつぶされそうになっている感じがした。
旭は目を合わせるのが怖いと言った。写真の話をし始めたあたりから合わせられなくなったんだろう。
だけどその理由が分からない。
普段旭の感情を雄弁に物語る瞳は、いろいろな感情が入り混じり複雑になっていて、今の旭がどんな思いでいるのかが読み取れなかった。
『こわい、助けて』と縋るように泣いているのを抱きしめたまま、どうしたものかと考える。
きっとこの写真が原因、というかすべての元凶だ。
こんなものを見てしまったから旭が不安定になってる。
旭から見えないところに写真を移した方がいいかなと思って頭をひと撫でしてからソファーから降りると、あからさまに旭がビクッと肩を揺らした。
「あっ、まって……、離れないで………」
慌てて俺の腕に縋りついてきた旭に妙な違和感を覚えて元の位置に座り直す。
………涙が止まった代わりに、俺の腕を掴んでる両手が震えている。
「……旭?お前、本当にどうしたの」
異様なまでに縋りついてくる旭が心配になってきた。こんなに精神が不安定になっている旭を見たのは初めてだ。
俺が屈んで目線を合わせようとすれば、旭は相変わらず俯いて合わせないようにする。
さっきよりもがっちりと顎を掴んで無理矢理目を合わせると、じわりと涙が目に溜まった。
「逸らせるな。ちゃんと、俺の目を見て」
「ふっ、う……ううぅ………」
一瞬だけ交わった視線を逃さずに命令すると、旭の瞳がはっきりと俺を映した。
まるで痛みに耐えるように眉を寄せて涙を零すまいとしている旭に、ゆっくりと優しく語りかける。
「旭、今考えてる事、全部言ってみて」
「………あ、や、………で、きない」
「俺は、旭が何に悩んで、どうして泣いているのか知りたいんだ。だから、お願い………」
「っ、楓さん………」
顔を歪めた旭の目からぽろりと涙が零れ落ちた。
そして腹をくくったらしく一度深呼吸をして、今度は力強い目で俺を見つめ返してきた。
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