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148.✩大胆
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✩✩✩✩
楓さんの腕の中で目が覚めた。小窓から射し込む光はまだ薄いから、朝方なんだろう。
安心する大きな胸板に抱かれていたけど、顔が見たくて少し離れたら楓さんの眉間にシワが寄った。
初めて会った日からは想像もできないくらい、色んな表情を見せあえる関係になれた。記憶をなくした俺が、楓さんと両想いになれたのは楓さんの努力が大きかったから。
どこかへ行っても俺の記憶が戻ると信じて必ず戻ってきてくれた。
今も前も、すごく大切にされてるんだってしみじみ思う。だから……、楓さんのためにも俺のためにも、なるべく早く記憶を取り戻したい。たとえ今の俺がどうなっても、消えてしまったとしても。
「ふふ……楓さん、好き、大好き……」
そう独り言ちて楓さんの腕の中に戻ると、しっかりと抱きしめられた。ずっと、ずっと俺を離さないでくれたらいいのに……。
二回目に目が覚めたのは随分と小窓の外が明るくなってからだった。二度寝して睡眠をとりすぎたせいで重くなった頭をどうにか働かせて隣にいる楓さんに抱きつく。
いつもならすっぽり納まるはずの場所がなかなか見つからない。それに、なんか、やわらか……。
「ふふふっ、朝から大胆ね」
「…………?……っ、わあああっ!!」
明らかに楓さんの声じゃない声がして、それを認識するのに数秒かかり脳が覚醒した。
文字通りベッドから転げ落ちた俺は床に腰を打ち付けた。痛みに悶える俺を見て、桜さんはあらあらと笑っている。
なっ、なっ……、なんで、桜さんが!?
寝室に入ることを楓さんが許可するとは思えない。
「か、楓さんはどこに……」
「楓ならご飯作ってるわよー。で、私はアサくんを起こしにきたの!」
「…………勝手に?」
「ふふふ、どっちだと思う?」
あんまり楓さんを怒らせるようなことをしないでほしいのに……。
楓さんが妬いてくれるのは嬉しいけど、悲しんだり怒ったりしてる姿はあまり見たくない。
「あの、桜さん……、楓さんが来る前に出てった方がいいですよ」
「もうアサくん、いっつも楓のことばっか――」
「俺がなんだって?桜姉も旭を起こしたなら早くダイニング行ってよ」
「か、楓さん……!」
ちょっと呆れたような顔をして楓さんが寝室に入ってきた。この様子じゃ、寝室に桜さんが入ることに楓さんは許可を出したんだ……。
「もうっ、これからだったのに!」
「何が『これから』だよ。さっさと出てけ」
楓さんは文句を言ってる桜さんを寝室からたたき出して俺の前にきた。
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