アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
149.✧借りる
-
✧✧✧✧
旭より早く起きた俺は朝ごはんを作ろうと寝室を出た。今日はかなり冷えこんでるから温かいスープもいいな、なんて献立を考えながら顔を洗ってダイニングに行くとすでに桜姉がいた。
マグカップ片手に向こうから持ってきたらしいファッション雑誌を読んでいる。ちなみに表紙を華々しく飾っているのは桜姉自身だ。
「なぁに、そんな驚いた顔して。おはよう」
「………おはよ。……朝ごはん、食べるでしょ?」
「うん、ありがとう。アサくんは?」
「まだ寝てる。だからうるさくしないでよね」
一応旭のためにも釘を刺しておこう。効果はないんだろうけど。
キッチンに入って朝食の支度を始める。俺たちのとは別に、桜姉の朝食はフルーツ多めでカロリーの低いものにしよう。桜姉にはとりあえず大好物のフルーツを与えておけば大丈夫だ。
「あ、そうそう、楓。今日一日、アサくん借りたいんだけど」
「えー…………」
「じゃあ、夜までとは言わない。楓の仕事してる間でいいわ。そうね…十時から四時くらいまで、これならどう?」
「……分かった……旭に聞いて」
俺が仕事をしている時は旭を構ってやることができないし、桜姉は向こうの生活でストレスも溜まってるだろうから羽を伸ばさせてやろう。もちろん俺の許容範囲で。
俺から許可を貰った桜姉は心底嬉しそうに今日のスケジュールを組み始めた。どうやら旭を買い物に連れて行くみたいだ。桜姉が家にいないのなら静かでいいけど、旭がいないとなると寂しくなるな。
「桜姉、ごはんできたから旭を起こしてきて」
「はーい。ふふふ、弟に使われようと、アサくんの寝顔が拝めるなら万々歳よ!」
少し優しくしたくらいですぐ調子にのる桜姉は、まるでデートするのかってくらいはしゃいで鼻歌を歌いながら寝室に行った。あの様子じゃ旭で遊ぶだろうな。………可哀想に。
案の定、少しすると旭の叫び声が聞こえてきた。同時にガタッと床に何かが落ちる音がして、慌てて様子を見に行く。
ドアが閉まっていて断片的にしか聞き取れなかったけど、これは完全に桜姉は旭で遊んでいる。
「…の、桜さ…………、楓さ……来る……に出て………………ですよ」
そろそろ助けた方がいいかなと思ってドアを開けると、ベッドに座る桜姉と床に転げ落ちたらしい旭の姿が……。
「アサくん、いっつも楓のことばっか―――」
楽しそうに笑ってる桜姉の言葉を遮って、早くダイニングに行けと言えば『これから』だとか何かほざいていた。心の底からめんどくさ……と思いつつ、桜姉をベッドから引きずり下ろして寝室から出す。
旭はというと、俺が寝室に入ってきた時に『楓さん……』と呟いただけで、桜姉を追い出すまで黙りだった。…また、俺が怒ってるとか考えてるんだろうな。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
149 / 322