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158.✧気が狂う
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✧✧✧✧
「―――っていうわけで……。だから、俺はお見合いする気ないよ」
「…………」
途中から旭が泣き出してしまったけど、なんとか家の事情もひっくるめてお見合いの事を旭に話した。
桜姉が直接旭に言ったのは、この件について俺が一人で片付けようとしてるのを見越して、恋人である旭にも関係があることだからちゃんと話しなさい、ということなのだろう。このお見合い話は俺が思ってるよりもかなり厄介なものらしい。
俺が話してる間ずっと静かに涙を流しながら聞いていた旭は、話が終わってからもしばらく黙ったままだった。
「……旭、……俺は旭のためなら、実家と縁切る覚悟だってできてるよ」
「………っ、楓さん…」
目を赤くした旭がぎゅっと俺に抱きついてきて、旭がどれだけ不安だったかが伝わってきた。
旭のことだ。桜姉からお見合いの話を聞いて自分が女だったら……、とか考えてたんだろう。
俺はどんな旭でもいいのに。
顎を掬って優しくキスをすると、さっきと同じように俺のセーターを握りしめる手の力が弱くなって思わず微笑んだ。キスだけでふにゃふにゃになっちゃうようなこんな可愛い旭を手放すことになったら、間違いなく俺は気が狂うだろうな。
「あのね、俺は旭と離れるつもりはないし、旭を離すつもりもないから」
「っ、うん……。ふふ、なんかプロポーズみたい……」
寂しそうに笑う旭に、そのままプロポーズとして受け取ってもらっていい、とは言えなかった。
旭が卒業したら海外にでも引っ越すかな……。
なんて考えて旭の髪を撫でていると、旭ははぁっとため息をついて俺を見上げてきた。
「……あの、楓さん……」
「ん、どうした?」
「俺が口出しできる話じゃないけど、やっぱり……、その人たちとは、ちゃんと話し合った方がいいと思う……」
「………うん、そうだよな……」
今回考えなくてはならないところはそこだ。旭の言う通り、双方の両親も含めてきちんと話し合いをした方がいいよな……。
先に説明したように分家だから金やら権力やらに目がない人なのだろう。向こうが強行手段に出ないとは限らない。
旭が俺とそういう関係だってバレてる可能性もある。そう考えると旭に手を出される前に片付けたい。
「話がこれ以上進まないうちに、話し合いしなきゃだ」
「………………」
「……旭?」
「なんか……、心配だな……」
旭は困ったように笑ってそう呟いた。何も心配しなくていい、と返そうとしたけど、そういえば旭の勘は当たるよな、とどこか冷静な頭で思っていた。
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