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163.✩流されない
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✩✩✩✩
「桜さんとはデートしておいて、本命とはデートしないの?」
「え?……そういえば楓さんとデートしたことない……」
一緒に買い物には行くけど『デート』らしいデートは一度もしたことなかった。
いつも出かける時は楓さんが誘ってくれるけど、本当は俺から誘った方がいいのかも……。
でも今はバイトしてるわけじゃないから経済力ないし、前の俺がバイトしてたらしく貯金はあるけど生活費は楓さんが持ってくれてるから、ほぼヒモ状態だ。
「ヒモなんて……バイト始めようかな……」
「バイト?楓が許すとは思えないけれど……」
「楓さんが許さないって、どういうこと?」
「前のあなたもバイトしていたけど、ことごとく楓にばれてすぐ辞めさせられていたわ。バイトして見つかって辞めさせられて、でもまたすぐやって見つかって……の繰り返し。いたちごっこみたいな感じね」
どうして楓さんはそこまで、俺にバイトさせたがらなかったんだろう。きっと前の俺も楓さんに少しでも負担をかけたくなくてバイトしてたのに……。
「どうしてって……楓なりの束縛じゃないかしら。自覚しているのかは分からないけれど、ああ見えて独占欲強いみたいだから。本当は家の外に出したくないと思ってるんじゃないかしらね」
「ええ…監禁は……楓さんと一緒にいられるのはいいけど、さすがに死んじゃうかも……」
「でしょうね。楓はそれも分かってるから学校は許容範囲として見てるんでしょう。だけどバイトはダメ」
「桜さんとのデートはオッケーでバイトはダメって……楓さんの基準、けっこう難しくない?」
普通は逆だと思うけど……。でも、今回のバイトは譲れない。クリスマスだって近いし何事も経験した方がいい。
「相手が誰かが問題なんじゃないかしら。身内はオッケーで見知らぬ他人はだめみたいね」
「帰ったら楓さんに聞いてみよう。ところで、前の俺はどこでバイトしてたの?」
「それなら大和と同じ所よ。彼ならまだそこでバイトしてるわ。詳しく聞いてみたら?」
「うん、そうする!ふふ、ありがと柚里!」
「………上げて落とすようで悪いのだけど、帰ったらあまり機嫌の良くない楓が待ってるんじゃないかしら…?」
「…………!」
「ふふ、一番はじめに楓のご機嫌取りをしなくちゃね」
そ、そうだった……。すっかり忘れてた…。
帰ったらまずは楓さんと話し合わなくちゃいけないんだ。最近桜さんがいてあんまり会話できてないし……。
そのあとは一日中ずっと、『桜さんに邪魔されないで楓さんとの時間を確保する方法』と、『どうすれば流されないで楓さんと話し合えるか』を考えて過ごした。
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