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179.✧お返し
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✧✧✧✧
「………俺、……楓さんの声で、イっちゃった……」
その先にどんな言葉が続くのか待っていると、旭は俺の背中に回した腕に力を込めた。心なしか肩が震えている気がする。
「俺っ……声だけで、感じちゃうくらい、楓さんが好き……」
「……ん」
「楓さんが……、楓さんがいないとっ、……生きていけないくらい、楓さんが好き……」
「うん」
……なんなんだろう、これは。
旭は声を震わせて真剣そうに言っているけど、プロポーズにしか聞こえない。ニヤけそうになる頬をどうにか引き締めて続きを促すと、旭は顔を上げて俺と目を合わせた。
やっぱり、目に涙が溜まっている。
「こんなに、大好きなのに……俺、楓さんの子ども……産めないしっ……結婚だって……」
「……それは」
それは、どうすることもできない問題だ。
俺も旭も男だから、そんなこと最初から分かりきってるし、俺は子供がほしくて旭と付き合ってるんじゃない。結婚ならこの国じゃまだ難しいけど、できるところでやればいい。
「俺は弱いから、周りに『楓さんは俺の恋人』って、伝えることもできないっ……」
旭が安心するなら、俺たちが付き合ってるって周りに言っても構わない。俺も本当は『旭は俺のものだ』って言いふらしたい。だけどそれをしないのは、カミングアウトをしたことによって、旭にデメリットがある可能性が少しでもあるからだ。
本当に、悲しそうに悔しそうに涙を流す旭を見て、胸が締め付けられた。大方、お見合いのことでも思い出したんだろう。
女だったら云々の話は、この間ちゃんとしたはずだ。だけど、ただでさえ記憶がなくて自分に自信のない旭のことだから、また不安になったのか。
「楓さんが望むこと、ぜんぶ叶えてあげたいのにっ……、俺、弱いから……」
「……旭」
「……っ、ごめんなさい……俺……、どうしても……不安になっちゃって……」
不安になった、と意思表示できるようになったことは大きな進歩だ。でも不安だということは、まだまだ愛情表現が足りないからだ。何をすればもっと旭に俺の愛情が伝わるんだろう。
「……ねえ旭、俺にしてほしいこと、ある?」
「……?してほしい、こと?」
「そう。もっと旭に俺の愛情を受け取ってもらうにはどうしたらいい?」
旭は一生懸命になって俺のおねがいを叶えてくれようとしていた。だからお返しに、今度は俺が旭のおねがいを叶えてあげるのが一番早く愛情が伝わるかもしれない。
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