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188.✧似てる二人
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✧✧✧✧
ユニットの二人と新人たちを帰して、時間が経つのも忘れて作業に没頭していたら社長に肩を叩かれた。どうやら放置していた俺のスマホが鳴っているようで、確認してみると旭からの着信だった。
電話をかけてくる前に何通かメールも来ていたらしい。全然気づかなかった。
ちょっぴり元気のない旭の声に違和感を覚えつつも、データを保存したり荷物をまとめたりして帰る準備をする。入り口のドアに寄りかかってそれを見ていた社長がにやにやしているのが視界に入った。
俺が電話を終えて片付け始めると、ソファーで様子を伺っていた社長が待っていましたと言わんばかりに嬉々とした表情で近づいてきた。
「なに、平坂もう帰るの?彼女がお呼び?」
「そういう社長はずっとここに居座ってますけど、他にやることあるんじゃないですか?」
「で、彼女とは最近どうなの?」
「ちょっとは俺の話も聞いてくださいよ。……なんかそれ、今朝も同じようなこと聞かれたんですけど……」
「えー?誰に?」
「甥っ子さん」
社長は一瞬きょとんとしていたけど、『甥っ子さん』という言葉が誰を指しているのか分かったらしく盛大に笑い出した。
その姿を見たら、前に静輝が『親戚の中でも麗子さんとは一番気が合う』と言っていたのを思い出した。うん、まあ、傍から見ても似てると思うけどね……。人の話を聞いてるだけ静輝の方がましか。
「ふふふ、静輝か〜。あいつもなかなかの奴だからねぇ」
「ほんと性格が社長にそっくりですよね。社長は人の話を全然聞かないけど」
「あははっ、そこは否定しないよ。静輝は有望だから……おっと、噂をすればなんとやら」
ふと社長がドアの方へと視線を移した。開いたドアからは静輝が顔を覗かせていて、社長が手招きするとにこにこしながら入ってきた。
「麗子さん、まだ残ってたんですね。秘書の娘が呆れてましたよ。平坂も、早く帰らなくて平気?」
「……もうすぐ帰りますよ。木久さんも今帰りですか?」
「俺は社長に用があってきたんだ。秘書の娘が『社長なら作業室にいる』って言ってたから来てみたんだけど……。そしたら平坂もいるからさー、驚いたよ」
驚いたよ、とは言ってるものの全然そんな風には見えない。どうせ俺もここにいるって予想してたんだろう。
「あっ、そうそう静輝、平坂を飲みに誘っても無駄だよ。家でカワイイ彼女が待ってるんだってさー。早く帰りたくてしょうがないらしい」
「へえ、そうなんですか?それは残念ですね」
旭のことを知らないであろう社長がご親切にも説明してくれた。それを聞いた静輝はさも今知ったとでもいうように残念そうにしていた。
……全部知ってるくせにね。
まったく社長は何を言うか分からない。静輝も静輝で微妙な顔をしてる俺を見て楽しんでるし。
「……そういうわけなんで、これで失礼しますね」
この二人が同じ場にいると胃が痛くなってくる気がして、俺は足早に部屋を後にした。
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