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1.名前で呼び合う ―力―
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「じゃ、俺次違う教室で授業だから。」
「おう、次の講義終わったら正門前で集合しようっか。」
「分かった。」
3限の講義が終わって、俺は次の教室に移動する。この瞬間がたまらなく寂しい。朝からずっと一緒にいたからだろうな。
「あ! 増村君!」
「おう、梅村。」
俺の4限の講義には、高校時に友達になった梅村が一緒だ。梅村の姿をみてホッとする。
「お疲れ。」
そう言って、俺は梅村の横に座る。
「お疲れ。どうしたの? なんか今日疲れてない?」
「そうか、俺疲れて見えるのか。」
「うん。何かあった?」
「……」
俺は考えた。コイツに俺の悩みを相談していいのかどうか、と。刹那に考えたあと、俺は性別には触れずに話すことにした。
「あのさ、俺に恋人がいるんだけどさ。」
「へー増村君恋人がいるんだ。」
「うん。そうなんだよ。恋人かどうかも定かじゃないんだよ。」
「どういうこと?」
「向こうは俺のことちょっと親しくなった友達としか思っていないみたいなんだ。そのくせ、たまに思わせぶりな態度とるから、よくわかんねーんだよな。」
「ほう。」
それで? と梅村が目で急かす。
「それでさ、アイツにも俺と同じ”好き”になって欲しくて今頑張ってるって訳。」
「へえ。実はさ、俺にも恋人がいるんだけど、俺たちは互いに尽くし合うって感じだからなー。」
「何?惚気?」
「あ、いやいや違うよ! あのさ、自然でいることが一番なんじゃないかな。」
「自然?」
「うん。頑張りすぎて変に力が入ってるから、疲れちゃうんだと思うんだ。恋するのに疲れるって、何か変じゃない?」
「変……か。」
「そう。互いに愛されてるなって思えるのが恋だと思うからさ。」
ニコリと微笑む梅村。
なるほど。俺は肩に力が入りすぎていたのか。
でも……
「自然にって、一番難しいことだな。」
思えば、俺はアイツに告白してからというものずっと作戦を練っては実行して、を繰り返してきたのだ。だから、今更何もせずにいるのが俺には違和感に感じる。そして、だ。アイツはふわふわしすぎていて、俺がしっかりしないと何処かへ飛んでいってしまいそうなのだ。
「どこにも飛んでったりしないよ。」
くすりと梅村が笑う。
「え?」
「全部、口に出てた。」
「え!」
うわ。俺、超恥ずかしいやつじゃんか!
俺は、恥ずかしさから手で顔を覆った。
となりで微笑んでいる梅村。梅村が優しい奴でよかった。
……自然に、か。
早く授業が終わらないかな。
早くアンタに会いたい。
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