アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
1.名前で呼び合う ―待ち合わせ―
-
漸く、4限の講義が終わり、俺は急いで返る身支度を始める。梅村もなぜか急いでいた。
「増村君もこの後帰るの?」
「ああ。ちょっと約束があって正門に行かなきゃなんないんだ。俺よりもそいつの方が正門に近い棟で授業を受けてたから急がないと待たせてしまう。」
「そうなんだ。俺も正門通るから途中まで一緒に帰ろう。」
「うん。」
そうして、俺たちは急いで教室から出る。梅村も用事か。もしかして恋人と待ち合わせでもしてんのかな、等呑気なことを考えてみる。
急ぎ足で向かえば、考えていたよりも早く正門につくことができそうだ。
目の前には、アイツがいた。人がたくさんいて混雑しているというのに、すぐ見つけてしまえる自分に苦笑する。
「じゃ、俺は向こうに行くから。じゃあね。」
梅村が小走りで去ってゆく。
「さよなら。」
俺はその後ろ姿にそう言った。直ぐに目の前を見えれば、俺を見ていた視線とぶつかる。
「お疲れ。増村。」
「お、おう。お疲れ。」
アンタに出会って途端に恥ずかしくなる。
田辺はというと、走り去る梅村をじっと見ている。
「さっきの、誰?」
「え? 高校の時にできた友達。梅村って言うんだ。アイツいいやつだよ。」
俺はさっきまで相談に乗ってもらっていたのを思い出す。
「高校の時の友達?」
「そう。クラスが一緒だったのと、追試常連メンバーなんだ。俺とアイツ。」
昔を思い出して笑っていると、少しだけ怪訝な顔をされた。
え? 怒ってる?
「どうした?」
未だ梅村ばかり目で追っている田辺。俺は服を掴んで問う。
「いや。なんでもないよ。」
一人ため息をつくと、俺の手を握り始めた。
「は?」
「手くらいつながせて。」
「え?」
突然の出来事に俺はパニックになった。
て、手をつなぐ?!
今、4限を終えて帰っている生徒がちらほらいるというのに。
「ダメなの?」
「い、いや。ダメじゃない。」
「そ、じゃこのままで。」
ダメじゃないけど、どうしたんだよ。
「増村。」
「な、何?!」
「顔。」
「だから何だよ。」
「赤いね。」
ニヤリと笑う目の前の奴。俺は悔しくて言ってやる。
「ムカつく。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 40