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1.名前で呼び合う ―リスト―
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ここは……
今、俺は田辺の部屋に来ている。
田辺は俺を机の近くに座らせ、冷蔵庫を漁っていた。
「何飲む?」
ガサゴソと冷蔵庫を漁っているのを、俺はただ見ていた。
「なんでも。」
「じゃ、お茶で。」
コップ二つを器用に片手で握り、片方の手でペットボトルのお茶を持ってくる。
「はい。」
コップを差し出され、トプトプとお茶が注がれる。
「あ、ありがとう。」
そう言えば、ニッコリと微笑んで冷蔵庫の方へと戻っていってしまう。
「あのさ、今日呼んだ理由なんだけどさ。」
何故か、照れくさそうに笑う田辺。だが、冷蔵庫の中から出されたものを見た瞬間俺は驚いてしまう。
「え。もしかして……。」
「そう、今日は俺の誕生日だったんだ。」
田辺はハニカミながらバースデーケーキを持ってくる。
「そういうことは、早く言えよ!」
目の前の顔がキョトンとしている。
「そうだね。でも、リストに書いてたんだよ?」
「は?」
「実はこっそりとあのリストにちっちゃく俺の誕生日を書いてたんだ。気づいてた?」
そうか、だからあの時俺に「今日が何の日か」や「リスト」のことを聞いてきたのか。
俺は手帳の中身を思い出す。はっきり言って、あの日――俺の想いがアンタに伝わったと思ってしまったあの日以来、手帳を机の引き出しにしまっていた。だから、リストの中身自体もぼんやりとしか覚えていない。
「やっぱり、見てないか。」
苦笑いを浮かべながら、隣に座る田辺。
「……ごめん。」
「いいや。俺も恥ずかしがらずに素直に言えばよかったかな。でも、ちょっと期待はしてた。君のことだから、何かサプライズを仕掛けてくれているかも何て考えてた時もあった。まあ、気づいてないってことが段々分かって来たから、自分でバースデーケーキを買ってみたんだけどね。」
「自分で自分のバースデーケーキを買うなんて虚しすぎんだろう。言えよ、そういう大事なことは。」
眉を八の字にして、田辺は困った顔をした。
それを見て、申し訳ない気持ちになる。
「……悪かったな。気づけなくて。プレゼントとか何にも用意できなかったし。」
白い生クリームの上には、ハッピーバースデイと書かれた板チョコが置かれていた。それを一人で食べる田辺の姿を思い浮かべると、とても寂しいことだと思えた。
「真澄。」
「は?!」
俺の心配など他所に、田辺がにやけながら俺を見ている。
「今日、名前で呼んでくれたでしょ? 嬉しかった、とっても。だから、これが今年の真澄からの誕生日プレゼントだよ。」
名前で呼び合うことが、プレゼント?
「……そんなんで、いいのかよ。」
「これがいい。」
「す、好きにしろよ。ばーか。」
そっぽを向けば、俺の名前が連呼される。
「真澄真澄真澄ー。」
「お前馬鹿だろ?! 連呼すんな!!」
恥ずかしいけれども、アンタがあまりにも嬉しそうに俺の名を呼ぶから、俺も嬉しくなる。
例えアンタが友達として親しくなれたことに喜びを感じていようとも、例え俺ばかりがアンタを好きになっても、俺は諦めない。
俺の方がアンタをどんどん好きになっていく。
だから、
アンタも、俺を恋人として好きになってよ。
一緒に祝った後、俺は自宅でリストにチェックを入れた。
?1.名前で呼び合う
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