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2.赤面させてやる―病人と寝不足者―
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「37度8分……」
無理やり体温計で熱を測られて、結果は思っていたよりも高い熱。田辺は眉間にしわを寄せて、体温計を見ている。俺自身は、体がゾクゾクとしてきていて、ベッドにあった布団を体にたぐり寄せる。
「あ、ごめん。寒い?」
「う、うん。ちょっと。」
「どうして黙ってたの?」
そっと、布団を俺にかけて心配してくれる。
「黙ってたわけじゃねーよ。俺も自分に熱があることは、今知ったし。」
「はあ……」
何故か大きなため息をつかれた。さっきから田辺の赤面した顔を見るどころか、ため息をつく姿ばかり見ている気がする。
「真澄。」
「な、何だよ?」
俺の手をとって、ギュッと握られる。
「もっと自分を大切にして。」
「は?」
「あのさ、何がしたいのかよく分からないけど、変なことで頑張って体を壊さないで欲しい。」
「変なことって、何だよ……」
「え?」
「変なことじゃねーし。」
「真澄?」
アンタに「好き」と言ってもらうために頑張ることが、変なことなのか? 俺は、悲しくなって田辺の手を振り払って、壁側に体を向けた。
「真澄、こっちを向いて。」
優しく囁かれる。
でも、そんなんじゃ嫌だ。
「お願い。」
嫌だ。
目頭が熱い。今ここでアンタの方を向くのは、嫌だった。
「アンタはさ……」
「何?」
「アンタはさ、ずるいよ。」
「……どうして?」
「いつも余裕な顔してるし……俺はアンタといるとこんなにも苦しいのに……ずるい。」
目から熱いものが流れ出て、言葉に詰まった。
”ギシ……”
「え?」
田辺がベッドに乗り、ベッドが音を立てた。
「真澄。」
ギュッと、布団の上から俺を抱きしめる。
「ちょっ! あああ淳也! 何して「ごめん。」え?」
「今まで不安にさせてごめん。」
布団に顔を埋められているせいで、顔は見えない。でも、コイツがこんなに弱々しい声を出したのは、初めてな気がする。
「不安にならないで、大丈夫だよ。」
「は?」
「俺は真澄といる時間が幸せ。真澄は?」
そろっと顔をあげて俺を見つめる田辺。
俺は……
「俺は、俺も、幸せに決まってんだろ……」
「そっか。」
フッと微笑んで、また布団に顔を埋もれさせていく。
「淳也。」
「何?」
「暑い。」
「水枕いる?」
「そうじゃなくて、お前が抱きついてるから暑い。離れろよ。」
「嫌だ。」
「は?」
問いかけも虚しく、田辺から返事が返ってくることはなかった。俺は、諦めてそのまま寝ることにした。
苦しいけれども、離れては欲しくない重み。
また、好きとは言ってもらえなかったな。
だけど、アンタの気持ちが少しだけ知れた。
アンタの匂いがするベッド。
アンタに抱きしめられて、居心地のいい場所。
「いつかアンタを俺の虜にしてやるから。」
ぼそりと壁に呟いて、俺は瞼を閉じた。
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