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3.告白をする
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告白をしようとぼんやり考えたものの、いざとなるといつ、どこでするのか全く思いつかない。アンタに初めて告白したあの日とは全く違うんだ。
リスト3.告白をする
初めてアンタを知ったのは、大学一年生の夏だった。たまたま乗っていた電車が一緒っだったんだ。その時の電車は満員だった。途中で妊婦さんが乗ってきた時にアンタはすぐ席を譲っていた。特に珍しい光景でもない。だが、何となく目がいった。それからも、たまにアンタとは同じ電車に乗ることが多くて、その度にアンタは何かしらいいことをしていた。3号車から2号車によろけながら扉を開けて移動する老人を助けている姿も、グッときた。その時に見せる笑顔も綺麗だった。
その笑顔を俺に向けてくれたらいいのに。
俺はアンタを目で追う日々が続く中、そんなことを思うようにまでになっていた。
降りる駅が一緒だったので、同じ大学に通っていたことも知っていた。たまに同じ専門学科の授業を受けていることもあったので、アンタが同じ部であることも知っていた。でも、話す機会はなかった。アンタには元々友達がいたみたいだし、俺にも梅村やその他にもいたから、お互い友達はそれだけで事足りていたのだ。
俺はアンタを目で追うだけ。それだけの生活がずっと続くばかりだった。
大学二年生になって、いつもは行かないコンビニに行ったとき、俺は驚いた。そこには、アンタがいたのだ。レジの向こうでチキンを並べている。俺は、買う気もなかったおにぎりを握りしめてそいつの方へ並んだ。
「いらっしゃいませ。おむすび、温めしましょうか?」
「あ、はい。」
コンビニの店員から毎回言われるこの言葉にも、照れてしまった。だって、初めて近くで見たから。
「こちら一点で105円です。」
にこやかなアンタは、朝の電車の時と同じ顔。おれは、お金を出しておつりが帰ってくるのを待つふりをしながら、アンタの胸についていた名札を見た。カタカナで”タナベ”と書いてあった。
すっかりアンタを覚えてしまった俺は、二年生になって同じ授業が多くなったことも知った。そして、英語の出席確認の時にアンタの名前を知った。
「Mr.タナベ」
「「はい」」
「Oh,sory.Mr.アツシ タナベ」
どうやら、田辺は二人いたらしい。そこで先生がフルネームでアンタの名前を読んだのだ。俺はそれを聞き逃さなかった。
次第に、アンタのいるコンビニに通う回数も増えた。
冷静に考えれば、おかしかったのかもしれない。俺は男で、アンタも男。でも、目で追っている間に、いつの間にかアンタのことしか考えられなくなっていた自分がいたんだ。アンタを見たとき、レジをしてもらったとき、偶然目があったとき、凄く嬉しくて顔が熱くなる。
募る、思い。
大体、アンタがいつの曜日に何時までいるかもわかってしまうくらいになった頃、俺は決心した。思いを打ち明けることを、決心したんだ。アンタを見ていれば、受け止めてくれる気もした。どこからそんな勇気が湧いたのかは今でもわからない。
あの日、俺はアンタに告白した。
告白して、アンタとこんなにも幸せな時間を過ごせるようになった。
俺に微笑んでくれる、それがたまらなく嬉しいんだ。
水曜日、告白した。
だから、また同じ水曜日に、俺はアンタにもう一度告白する。
だから、どうかお願い。
今度こそ、俺のことを好きだと言って。
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