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3.告白をする―火曜日2―
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「今日のテーマは――」
3限のゼミは、梅村と一緒だ。今日の発表は梅村の番だったが、梅村の発表は頭に入らなかった。配られたプリントをただ眺めるだけで、俺の頭の中には田辺の見せた悲しい顔で占めていた。
アイツ、いきなりどうしたんだよ。
いろいろと考えたけれど、全く原因が分からない。俺は、次第に苛立ちを覚える。チラリと時計を見れば、開始してまだ10分も経っていなかった。
今頃アイツは何を考えているんだろう。
ぼやける視界。消えてゆく音。
「増村君、増村君……。」
「んあ?」
気づいたら、梅村が俺を起こしている体勢になっていた。
「寝てた?」
「うん。爆睡してたよ。」
ちょっと苦笑いをする梅村を見て、ハッとなる。キョロキョロと周りを見渡す。
「もう授業は終わったよ。先生も増村くんに気づかないでそのまま帰っちゃったし。」
「あ、ありがとう。」
俺は急いで時計を見る。
やばい。もう15分も過ぎている。
「どうした?」
「悪い、俺急がないと!」
「あ、俺もじゃそれに付き合うよ。」
梅村は本当に優しい奴だ。俺は、笑顔でそれに応えて一緒に正門めがけて走った。
はあ、はあ、はあ――
乱れる呼吸。それさえも気にならない。俺は、今からアンタに会いに行くのだから。
次第に見え始める正門。そこには、一人立ってこちらを見ている田辺の姿があった。
「あ、あの人!」
梅村が何かを察したようにそう言った。
「うん。アイツと待ち合わせしてたんだ!」
「そうなんだ。」
梅村は、凄くやさしく微笑んだあと俺よりも早く走る。
「おい、大丈夫かよ!」
体が弱い友人が少し心配になる。
「大丈夫! じゃ、俺先に帰るから! またね!」
元気に、田辺の横を走り抜けてゆく。俺は、減速して田辺に歩み寄る。
「遅かったね。」
少しこわばった顔を向けられる。
何だよ、そんなに怒るなら最初から約束なんてせずに先に帰ればいいじゃん。
駆けてきたため、俺は息を整えながらそんなことを考えた。いつまでたっても乱れた呼吸を繰り返すことしかしない俺に苛立ったのか、荒々しく俺の片手を握り駅へと強引に歩かされる。
「ちょ……田辺……」
「何で遅かったの?」
俺の前を歩くアンタの顔は見えない。だが、その声で、アンタが今怒っていることは分かった。
「何でって……」
「言えない理由?」
「は?」
「俺に言えない理由でもあるの?」
「どうしたんだよ、急に……。」
いつもとは違うピリッとした空気に、俺は口をつぐんでしまう。
「俺、待ってたのに。」
「な、何だよ! ゼミだから遅れるの分かってんだろう?! そんなに待つのが嫌なら先に帰れば良かったじゃんか!!」
意味分かんねーよ。
「ゼミ? 真澄のゼミは早く終わってたみたいだったけど?」
「は?」
ひどくイラついているらしい。俺ことを部屋の外で名前呼びしている。
「いいから。」
何がいいのか、さっぱり分からない。
でも、ずかずかと歩く田辺に頑張ってついていくことしか出来ない。
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