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3.告白をする―水曜日3―
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まだ食べきっていなかったうどんの麺が汁を吸って伸びてしまっている。俺は、それを食べることもできなかった。
「諦めて。田辺は俺のもんだ。」
先ほどのふざけていた表情とは打って変わって、真剣な表情の竹本。
何なんだ、コイツは。
「諦めろって何だよ。」
俺は、出ない声を一生懸命に出してそう答えた。
「君、田辺のこと好きでしょ?」
何言ってんだ、コイツ。そう思いながらも、俺は首を縦に降ることしかできない。
「やっぱり。だと思った。俺ね、君の存在が一番厄介なんだ。だから、君には早く諦めて欲しい。」
「な……だよ。」
「え?」
「なんでだよ。」
「ちょっと、増村く「なんでだよ!!」」
「何で俺が諦めなきゃいけないんだ!」
俺は、よくわからないフツフツと煮えたぎった何かを爆発させていた。丁度混んでいた食堂で、注目の的になる俺と竹本。
「ちょっと、増村君。落ち着いて。ここ食堂!」
慌てだした竹本が、椅子から立ち上がり、俺を強制的に外へと引きずり出した。人気のない大学の隅の休憩場にあったベンチ付近で、手を離される。俺は、つぐんでいた口を開く。
「こっちだって……こっちだって苦労したんだ! 田辺だぞ? あんなふわふわした奴を振り向かせるのだって凄く大変だったんだ。それに、一緒にいればいる程俺はアイツが好きになった。確かにアンタの方が古くからアイツと親しいようだけど、この気持ちはアンタなんかには負けない。負けてない!」
言い切った、そう思った。
「気持ちねー。」
そう言って、頭を掻き始める竹本。
「……。」
「ちょっと、やりすぎたかなー。」
困ったように苦笑いを浮かべる。
やりすぎた?
「増村君、俺ね、何部か知ってる?」
「は?」
また突然何だよ。
「ま、わかんないよね。俺ね、演劇部なんだ。」
だからなんだよ。
「さっきのは全部演技。」
「は?」
「俺と田辺はただの親友。俺は女の子が好き。田辺が君のことばかり話すのは本当。アイツが君のことを好きなのも本当。俺の演技もなかなかのものだったでしょ? 演劇部のエースだから。」
「え?」
「心配してたんだよ。」
心配?
「アイツが一方的に増村君のことを好きなだけで、君がアイツをただの友達だと思っていたらどうしようって、心配してたんだよ。」
「な、んで?」
「ほら、増村君って容姿が可愛い上に中身が乙女だから。アイツが変に勘違いしてんじゃないのかなって。」
「はあ?」
「でもよかった。増村君が田辺に本気だって分かってほっとした。」
どうしてこう、アンタもアンタの友達もお節介なやつばかりなんだろう。
「何か、ごめんね? やっぱりやり過ぎかな。」
俺の顔を見て、竹本はそう言った。
俺は、さっきまであった怒りや苛立ちが消えていた。なんというか……呆れた。
「ったく、やり過ぎだ! こっちはうどんがまだ半分残ってたのに! ああ損した! 大損!」
拳を軽く竹本の胸に叩いた。
「今度は肉うどん食いたいんだけど?」
竹本は微笑んだ。
「了解。俺の親友もよろしく。」
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