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3.告白をする―水曜日4―
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お昼に肉うどんを奢ってもらった。3限目の授業は、満腹な胃のせいで睡魔が襲う。
眠い。
まぶたを閉じて、思い描くのはアンタの笑っている顔。
「増村。」
とある晴れた夏の日、アンタと俺はいつものように一緒に家まで帰っていた。まだ、俺もアンタもお互いに苗字呼びだった頃だ。
「何?」
コンビニの近くで立ち止まって俺を呼ぶ声の方を向く。
「コンビニ、寄ってもいい?」
汗を垂らしてとても暑そうなアンタはそう言った。俺も、飲み物を買いたかったから、それに同意する。
自動ドアの中は冷房が効いていて、汗が一気に引いた。
店内をうろつく田辺。
「なあ、買うもの決めてねーの?」
何の目的もなしに歩く田辺にそう問えば、エヘッと笑われた。俺は、半ば呆れながらもお茶を取りに奥へと向かった。
「増村は何買うか決めてたの?」
後ろからついてくる田辺。
「当たり前だろ。だいたい、目的もないのに入ったら迷惑だろうが。」
「んー、まあ、そうだね。」
「コンビニ定員のくせして。」
「あ!」
「今度は何だよ。」
ガラスの扉に手をついて、ひとつの商品を眺めだした田辺。
「新商品だよ。噂には聞いてたけど、まさかもう出てるなんて。」
「買えばいいだろ。」
そう言って、俺は扉を開けて目的のお茶と新商品を手にとった。
「はい。」
アンタの方に突き出せば、笑顔で受け取られる。
「ありがとう。」
「別に。あ……。」
「どうした? 増村。」
目の前に見えたのは、新商品のアイスだった。だが、ここで騒いだら、コイツと同じじゃないか。俺はチラリチラリとそれを気にしながら通り過ぎようとした。
プッ
後ろにいたアンタが吹き出して笑い始めた。
「何だよ。」
「いや、欲しいんでしょ?」
「な、何がだよ。」
「アイスの新商品。」
「……。」
「ほら、図星。」
ニッコリと笑ったアンタは、扉を開けて新商品のアイスを手にしてレジに並んだ。俺も慌てて田辺の後ろに並ぶ。
「俺たち似たもの同士だ。」
嬉しそうに微笑むアンタの顔を、俺は今でも忘れはしない。
「――――増村君! 増村君!」
え?
梅村の声?
「増村君!!」
「う、うわっ!!」
え? 梅村がどうしてここに? あれ、コンビニ……
周囲を見渡して漸く意識が戻った。そう、俺は3限を受けていたんだ。そして、隣に梅村が座っていたんだ。さっきのは、夢。
俺と梅村以外、ほとんど誰もいなかった。
「授業終わったよ?」
梅村がまた起こしてくれたらしい。
本当にお前、いい奴。
「増村君、寝てたでしょ?」
「う、ん。ごめん。」
「それは別にいいけど、いい夢でも見てたの?」
「え?」
「すごく幸せそうな顔してたよ。」
仕方がないなあと、微笑みながら席を立つ梅村。
「じゃ、俺は用事があるから帰るね。」
どうやら、俺を起こすためだけに残ってくれていたらしい。
「あ、ありがとう。」
「どういたしまして。あと、頑張ってね。」
「え?」
「手帳。」
俺の下を人差し指で指したあと、彼は帰っていってしまった。
下を見てみれば、リストを載せた手帳が開きっぱなしだった。
「まいったな。」
苦笑いをして手帳を閉じた。
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