アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3.告白をする―最終話―
-
何でだよ。こんな時に限って土砂降りになるなんて!!
一度家に帰ってから、俺は気合を入れて田辺のバイト先へと足を運んだ。徒歩数十分でつくコンビニエンスストア。10分程経ってから、顔に落ちる水滴。空を見上げれば、そこには星ひとつ見えない暗闇があった。
ポツ……ポツ、ポツポツポツ
ドシャー
いきなりの豪雨。
幸い、手元には折りたたみ傘がひとつ。
俺はそれを開いて雨に濡れるのを防いだ。
あと少しでアンタの待つコンビニに着く。
時刻は21時54分。
あの横断歩道を渡れば、アンタに会える。
期待と緊張。
その二つを感じながら足取りは早まった。
あれ?
横断歩道近くに設置されている歩道橋の階段近くに寒さで凍えている小学生くらいの男の子が立ちすくんでいた。俺は、その子に声をかけた。
「君、どうしたの?」
「あ。」
ガクガクと紫色の唇を震わせているその子。どうやら、雨に濡れたせいで体温が下がっているらしい。そのままにしておくわけにはいかない。
「ほら。」
俺は、その子に傘を突き出した。「え?」という顔で見られた。
「傘、持ってないんだろ? 寒そうだし。これあげるよ。」
「お、お兄さんはどうするの?」
「俺? 俺は……ああ、あの渡ってすぐにあるコンビニで傘買って帰るから大丈夫。お兄さんこの傘じゃ小さかったからコンビニの大きなのが欲しいんだよね。」
微笑みながら傘を渡す。ついでに来ていたジャンパーを脱いでその子にかぶせてやる。
「ほら、いきな。俺すぐコンビニ行きたいし。」
その子は何かを考えるような仕草をしたあと、パッと俺に背を向けた。
「お兄さん、ありがとう! いい傘が見つかりますように! じゃあね!」
ニッと笑って駆け足で帰る男の子。
「何だよ。あんなに元気あんじゃん。」
くすりとその後ろ姿を見送った。
きっとアンタも同じことをしてたんだろうな。俺も少しアンタに近づけたかな?
青信号になった歩行者用信号機。
雨に打たれながらも、俺は負けじと前に進む。
暗闇の中に明々と光の灯ったコンビニ。その出入り口の前には、大きめの傘を手にしているアンタが立っていた。
「よかった。会えた。」
フッと微笑みながら、アンタがそう言った。
「迎えに来るって言ってたんだ。当たり前だろう。」
俺もつられて笑う。
田辺は直ぐに傘を開いて、俺が雨に濡れないようにしてくれる。
「ああ、ずぶ濡れだね、増村。」
「アンタが俺の立場でも同じだよ。」
「え?」
「とりあえず、帰ろう。」
田辺の温かい手を握って、俺は店と少し離れた駐車スペースへと引っ張った。
早く、言わなくちゃ。
「田辺。」
「何?」
言わなくちゃ。
「田辺。」
「何?」
言わないと。
「田辺。」
「さっきから名前ばかり呼んでるね。」
「あの、さ。」
言うって決めたじゃんか。
「俺、」
梅村や竹本が応援してくれてたじゃないか。
「あんたのことが」
早く。
「す」
早く、この想いよ、アンタに届け。
「好きだ!」
激しく傘を叩く雨の音。それにも負けないくらいに叫んだ君への気持ち。勇気を出して目を開けて君を見る。
固まっている表情。
「田辺?」
呼びかければ、目から涙が出ていた。
「田辺?」
「いいから。」
「え?」
「俺の名前は外でも呼んで。」
「あ、淳也?」
「うん、そう。」
「淳也。」
「何?」
「俺の虜になれよ。」
徐々に近づいている顔にそう言うと、微笑むアンタはこう言った。
「もうなってるよ。好き、真澄。」
傘で誰にも見られないように遮りながら、俺とアンタはキスをした。
『君に好きだと言わせたい』 終
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
26 / 40