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番外編
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とある夏休みの一日 in増村の部屋
俺は、自分自身に衝撃を受けている。
「どうした?」
「ばっ馬鹿見るな!」
横から田辺が俺の握りしめている紙をのぞき見てきた。俺はそれに気づいて急いで握りしめていた紙をグシャグシャにくるめた。
夏休み、今日は普通の夏休みの一日じゃない。今日は成績表が学校から送りつけられたのだ。俺の家に届いているということは、実家にも届いているはず。まったく、お節介もいいとこだ。
「何隠してるの?」
気のせいだろうか、田辺の微笑みが黒い。そして怖い。
「秘密の一つや二つ男は持ってねーと魅力的にならないんだぜ。」
丸めた紙を後ろに隠す。田辺はため息をついた。
「またそんなでまかせ言って。」
「でまかせじゃねーし!」
「へー。俺さ、真澄のことなんでも知りたいんだけどな。」
え?
「でも、教えてくれないんだね。」
突然しおらしくなる田辺に、俺は調子が狂ってしまう。
「いや、その、何て言うの?」
「何?」
「だから、その、あれだよ。」
「あれって?」
ギブ
先に根を上げた俺は、丸めた紙を前に突き出した。
「成績表だよ。」
田辺は、その紙を丁寧に広げて目を丸くした。
「真澄!」
成績優秀じゃん! すごいんだな! と褒められることはなかった。代わりに、ものすごい形相で紙を睨む田辺が前にいた。
だから見せたくなかったのに。
「真澄、馬鹿だったんだ。」
「ちょっ! 俺はバカじゃねーし! ただ、ちょっと油断してただけだし! 単位の10や15は落としても大丈夫だし!」
また、ため息をつかれた。
「真澄、ここに座りなさい。」
「はい。」
田辺に促されて、俺の部屋だというのに正座させられる。
「どうして、言わなかったの?」
「何を、でしょうか……」
「勉強がわからないって、言ってくれたら教えてやれたのに。」
珍しく怒っている田辺は、怖い。
「えと……」
「言い訳はしない。」
「はい。そういう淳也はどうだったの? 今日来たんだろ? 成績表が。」
田辺は「あ、そうだ。」といって、ポッケに入れていた封筒を出した。
「え、まだ未開封なのかよ。なんだよ、人のこと言えねーだろ。」
ちょっとホッとしてそんなことを言った俺は、数秒後に後悔することとなる。
「ほら。」
少しだけ得意げに見せてきた成績表は、すごかった。俺のすごさとは正反対。
「え、淳也って天才だったの?」
「天才じゃないよ。ちゃんと授業受けてれば80点以上は採れるでしょう。」
田辺の成績は全て85点以上。100点もある。
ありえない。
「ありえねー!」
俺は二度目の衝撃に頭を抱えた。
くっそ! これじゃ田辺にいいとこみせられねーし!
そればかりか、ずっと馬鹿扱いされんじゃん!
嫌だ!
そんな俺を見て、田辺はニコリと笑って言う。
「次の、テストは俺がみっちり教えてやる。」
何だろうか。恋人同士で勉強会とか本来ならば素敵な響きなのにどうしてときめかないのだろうか。そればかりか、次のテスト期間が恐怖でしかない。
あたふたしている増村と、それを見て楽しんでいる田辺のお話でした。Fin.
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