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番外編 6 (2月)
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バレンタインデー!! の前に、節分が来た。不本意だが、淳也が一緒に恵方巻きを食べたいとか豆まきしたいとか言っていたので、俺は今その準備をしている。
「真澄、節分って大豆じゃなかった?」
「大豆だったら、まいた後の豆食べるのに抵抗があるだろうが。落花生だったら、カラを向けばいいし。ほら、これ。」
「え?」
淳也に、お手製のお面を渡す。
「お前、鬼な。」
まじまじとそれを見たあとに微笑みながら頭から付け始める淳也。
「へー、これ、真澄が作ったの?」
「まあ、な。」
「すごいな。」
目の前は鬼の顔。でも、声は淳也の声。
「じゃ、始める?」
「おう。」
優しい鬼。俺は淳也に落花生をやんわり投げつける。逃げる淳也。
「鬼はー外! 福はー内!」
「うわー」
演技まで入れてくれるその姿が微笑ましかった。落花生を投げつけて、鬼は外なんて言っているが、実際はこの鬼にずっと家の中にいて欲しいなんて思っているということを、口が裂けても言えない。
だって、恥ずかしいじゃねーか。
玄関付近で俺たちは豆まきを終えて、撒き散らかされた落花生を二人で拾った。
「一粒でも残ってたら、今日から俺の部屋出入り禁止な。」
なんて冗談交じりで言えば、真剣に淳也は探した。いつも余裕そうな顔をしているから、これくらい切羽詰った表情をさせると面白い。
「多分、これで全部。」
そう言って、集めた落花生を俺に渡した。
「淳也。」
「何?」
やっぱり、こいつはどこか抜けている。
「お前、そろそろ鬼のお面外さないか?」
「あ……」
恥ずかしそうにお面を取って机に置いた。
「そ、そうだ。真澄、恵方巻作ろう。」
恥ずかしさから、話をずらした淳也。俺は笑いながら縦に頷いた。
「えっと……今年は……」
「東北東だ。歳徳神様にお願いすること、決まった?」
出来上がった恵方巻きを手にして二人で東北東を向く。
「としとく…。」
「神様の名前だよ。」
柔らかく微笑んで、淳也は恵方巻きを口にした。俺もそれを見て自分の手にある恵方巻きを口にする。
なんていうか、やっぱり恵方巻きってデカイ。もごもご必死で加えながらお願い事をする。
”ずっと、コイツと一緒にこんなふうに過ごしていけますように。”
チラリと横を見れば、淳也も必死でもごもごと食べていた。傍から見たら、男二人が恵方巻きを無言で食べている姿って、シュールな光景だろうな。なんて思ってしまう。でも、これが俺の幸せ。そして、俺が幸せだと感じているこの瞬間が、お前の幸せにもなっていたらいいなと思う。
先に食べ終えたのは淳也の方だった。ふうっと、一息した後、満足そうな表情をして俺を見つめていた。俺は苦しくてもうすぐ限界が来そうだった。
こ、ここで終えてたまるか!
俺は男の意地を見せて最後までどうにかして食べきった。その姿を見ていた淳也は突然立ち上がって冷蔵庫のところに行った。苦しくて目だけで追っていると、微笑んでお茶を俺に持ってきてくれた。
「お疲れ様。」
あまりにも甘く微笑んで、俺の頭を撫でてくるものだから、ドキドキしてしまう。
ああクソ! またときめかされた!
バレンタインデー覚えてろよ! 俺がぜってーにお前をときめかしてやる!
そう決意した、節分の日。
俺たちは年の数だけ落花生を食べて、楽しく過ごした。
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