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番外編 7 (バレンタインデー)
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「ま、また……失敗……」
あれだけ心に誓ったことも実行出来なかった。
まさか、チョコレートがこんなにも難しいものだったとは思ってもみなかった……
そう、俺は今、チョコレート地獄にあっている。
時は2月14日金曜日、早朝。
今日は2限と4限があって、4限は体育だ。その体育にはアイツもいる。そして、体育の後はアイツが放課後にバイトを入れているから、22時まで会えない。
渡し時は、4限の後!
そう計画していたのに、未だにチョコレートが綺麗に仕上がらない。
何度作ってもダマが出てしまったり、固まったと思って型から出したら、半分固まりきれなくて型崩れしたり、そんなのばかりが出来てしまう。ここ最近、失敗したチョコを食べ過ぎて、太りそうだ。
どうしたものか……時計に目をやると、もう出発しないと2限に遅刻してしまう時間になっていた。サボりたかったが、ただでさえも成績が悪く、また成績が下がったらアイツからなんて言われるか……。
チョコ作りは、4限から帰ってからまたやることに決め、俺は調理器具だけを片付けて乾ききっていないチョコを外に出したまま外に出た。
* * *
「淳也、それ、どうしたんだよ。」
「え? これ?」
4限前に、更衣室でジャージに着替えていると淳也が現れた。しかも、その手には大量の……
「さっき、女子が俺にって……」
困ったように置き場を探す淳也。
よく、俺の前でそんなもん見せられるよな……。そのくせ、俺にはチョコをせがまない。
ムカついた。
その日の体育は、ペアで何かやるときも必死でアイツ以外の奴と組んでやった。アイツは悲しそうな目をしてたまに俺を見ている。
ふん、ざまあ見ろ!
「増村。」
「あ?」
一緒にペアを組んでいた西君とか言う奴が俺に声をかけてきた。機嫌が悪い俺は愛想を忘れて返事をした。そのせいか、若干ビビられた。
しまった。
「えっと、何か? 西君。」
優しく聞きなおすと、ほっと胸をなでおろした西君。
西君は淳也よりは低いけれども、それなりに背の高いイケメンだ。爽やかでスポーツのできるイケメン……クソ! きっと、コイツもチョコを大量にゲットしているに違いない。これだから、イケメンはっ!!
「増村?」
イケメンに憎しみを抱いていた俺はハッとなる。いかんいかん!
「で? 何か用? いきなり俺の名前呼んで。」
「いやさ、増村ってチョコクッキー好き?」
「え?」
きっとこいつ……”チョコもらいすぎちゃって~でも、俺クッキーは苦手だから、よかったら増村におすそ分け~”なんて魂胆じゃねーだろうな??
なんて考えを顔に出せる訳もなく、無駄に驚いた表情をしたまま固まっていると、西君から出た言葉は予想以上のものだった。
「その、さ。俺、料理作るの好きなんだわさ。それでさ、もしよかったら……俺の作ったチョコクッキー、食べね?」
「え?」
「あ、いや、季節のもの作りたくてな。だけど、食べてもらえる奴がいなくて……だな。」
なぜコイツは、男の俺相手にこんなにも照れているんだ?
……まあ、そういう理由ならもらってやってもいい。
「いいぜ。食うよ。」
俺がそう答えると、ぱあっと表情を明るくした西君。
全く、そこら辺の女の子に渡せばいいだろうに。
あ、そっか、イケメンだと女の子におすそ分けしたつもりでも本気で捉えられてしまうからダメなんだな。もしかしたら、西君は本当に料理大好きな乙女男子なのかもしれないし!
一人完結させて、西君にぽんっと背中を軽く叩いて「大変だな、イケメンは。」と励ましの言葉を送ると、変な顔をされた。
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