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番外編 8 (バレンタインデー)
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「真澄、何それ?」
体育終わりに早速西君からチョコクッキーをもらった。……のは良かったが、着替え終わってこちらに来た淳也が何か怒っている。
なるほど。女の子からもらったって勘違いしてんだな。流石に温厚な淳也も嫉妬という訳か。
その姿を見れただけで、さっきまで自分がモテない現実に苛立っていた気持ちが穏やかになったので、誤解を解くことにした。
「これ、体育の時俺と組んでた西君からもらったんだよ。」
美味そうだろ? と淳也に見せると、眉間に皺を寄せられる。なんだよ、お前だって女の子達から沢山もらってんだからいいじゃんか。それに、俺のは西君だぜ?
言いたいことは山ほどあったが、淳也の表情が怖くて何も言えなかった。
真っ直ぐ、家へと帰ることにした。
そう、コイツがバイトに行く間に、俺は朝放置してしまったチョコを胃の中に片付けて、新しいチョコをまた作らないといけないんだ!
だ!
だ!
だ!?
「え? 今日、バイト着忘れた?」
電車から降りても、家へと歩く淳也。普段はここでお別れ何だけどな。……おかしいな?
「……今日、休みとってあるから。」
「休み?!」
珍しい! コイツはほとんど決まった曜日には必ずバイトを入れる奴なのに。そして、よりによって今日休みとか!! どうしよう。
不機嫌ながらも、焦りだした俺の異変に気づいた淳也は俺をチラチラ見始めた。
やばいな。これは徹底的に俺の部屋に入れさせてはならない!
ああもう、いっそこのクッキーを俺が作ったことに!! いや、そんなのは嫌だ!!
コイツには、俺の作ったもので美味しいと言ってもらいたい。
「あ、あのさ。」
「何?」
それにしても、まだ怒ってるのか? 未だにむっとして口数少ない。
でも、それとこれは別だ!
「今日、お前の部屋に行こうぜ。」と俺が言うと、「嫌だ。」と即答された。
「え、なんでだよ?!」
「今日は真澄の部屋がいい。」
……ダメだ。これはどうにもなりそうもない。
俺は諦めてアパートの自動ドアをくぐった。
* * *
”バタン”
「え?」
俺が自分の部屋に入ると、勢いよくドアがしめられて驚いた。まだ部屋の電気もつけていないから、真っ暗だ。感じるのは、淳也の息の音。そして、ぎゅっと抱きしめられる感覚がした。
「真澄。」
耳元で俺の名前を呼ぶのをやめて欲しい。ぞわっとして変な声が出そうになるのを堪える。
「真澄。」
「な、なんだよ!」
「どうして、チョコくれないの?」
弱々しい声音。
「なんだよ、淳也。お前らしくない!」
体を離そうとするも、ガッチリと抱きしめられていて離れられない。
なんだろうこれ。デジャブ。
前にもあったな。こういうの……
もしかして……
「何? 淳也、お前……」
俺がそう言うと、肩に頭が埋められた。髪の毛が首にあたってこそばゆい。
「うん……嫉妬。」
そして、ぼそりと俺にそう言い放ち、漸く俺を抱きしめていた腕がすとんと下に落ちた。それを機に、電気を付ける。
目に見えるのは、しょぼくれた顔をしている恋人だった。
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