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2.偽りの口調、偽りの笑み-18
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キスされる。
何故かそう思った。
それくらい、夏との距離が近くて、三善は、グッと身体に力を入れた。
すると……。
「失礼しますッ。宮本さん、打ち合わせの時間ですので、2スタジオに来て下さい」
救世主とも言える声がドアの向こうでした。
スタッフの一人が夏を呼びに来たようだ。
三善はその声を聞き、安堵した。
「も、もうそんな時間なんだ。衣装合わせも済んだし、ほらっ、行ってきな」
三善は夏を見ずに、部屋に備え付けられている円盤の時計を見ながらそう言った。
あんなにあった時間はもう無くて、衣装を合わせた時間が身近く感じた。
「でも俺……。はい、行ってきます」
夏は何かを言おうとしていたが、本当に時間が押していると分かるとその先を言わずに部屋を出て行った。
夏が部屋を出て一人になり、身体に力が抜け、よろけてしまう。
そして、身体をテーブルの端で支え、空いた手で顔を押さえた。
(あの子……危ないかも……)
何が危ないのかは分からない。
けれど、これ以上近くにいてはいけないと、三善の中の何かが言っている。
けれど、そんな事言ってはいられない。
これから撮影が終わるまでの間は、気を付けていても夏と顔を合わせなければならない。
「必要以上に関わらない……」
そう呟く。
けれど、それができるか心配だ。
夏は純真無垢な男。
その男に嘘など付いても意味がない。見破られる。
それが分かっているから、三善は夏と距離を取りたい。なのに、それができない環境に陥る事は明白で、どうしたら良いのか分からない。
三善はその場で数分考え込んだ。
でも、答えは出ずに、その日は終わったのだった。
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