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7.味わった事のない感情-2
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この仕事のオファーが来た時は断ろうかと思った。
けれど、こんな大きな仕事を断る理由も思い付かず、その場で頷いてしまった。
そんな自分の性格が恨めしい。
「失礼します……」
コンコンッとドアを叩く音がして、ガチャっと扉が開いた。
その透き通る声に、身体がドキッと反応する。
「Richリーダーの冬椰壱成で……」
中に入って来たのは、三善が思っていた通りの男だった。
そう、壱成だ。
「あっ…どうも……」
「こんにちは……」
壱成は、三善の顔を見ると少し気不味い顔をした。
それは当たり前の反応で、仕方ないと思う。三善だって、気不味い。
けれど、その態度に少しだけ心が痛かった。
「俺、先輩に呼ばれてるのでそっち行きますね。後はよろしくお願いしますッ」
新人スタッフはそう言って、携帯を片手に持ってこの場を離れてしまった。
まさかの二人きりに、三善は一人、この場をどうするか悩む。
「えっと……。は、早いね。さすが、リーダーだ」
口から出たのはそんな言葉だった。
それしか、三善には思い付かなかった。
「撮影がこの近くだったので、たまたまです……」
「そ、そっか……」
会話終了。
長年この仕事をしてきたが、こんなにも自分のペースに持って行けないのは壱成くらいだ。
いや、もう一人いるか。
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