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8.切なくて痛くて、嬉しくて-1
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その日の仕事は全くもって集中できなかった。
けれど、だからと言って、ヘマをするほど、三善は馬鹿ではない。
淡々と熟し、スムーズに終わらせた。
だから誰も、三善の心情に気付いていない。
「お、お邪魔しまッす」
「どうぞ。まぁ、適当に座って……」
仕事が終わり、夏とは時間差で仕事場を出て、近くのカフェで待ち合わせをした。
そして、後から来た夏の姿が窓越しから見えると、三善はすぐに店を出て、夏と合流し、そのまま、三善の住むマンションへと向かった。
夏は玄関先から緊張をしていて、いつもみたいなテンションではなく、なんだか物静かで、その姿が不気味に見えた。
「何か飲む? アルコールは缶ビールくらいしかないんだけど。お茶の方がいい?」
「あっ、はい。おっ、お茶飲みますッ」
その空気がなんだか嫌で、三善は夏をリビングのソファーに座らせると、直ぐに飲み物を選ばせ、運ぶ。
「そう言えば、君、仕事終わって何か食べた?」
そして、気付く。
夏は夕飯を食べていない事に。
「え……? あ、そう言えば何も……」
三善は、中途半端な時間にスタッフと共に残った弁当を食べたのでお腹は減っていなかった。
だから忘れていた。
「だよね! うわっ、ごめん。何か買ってくれば良かったよねっ」
食べる時間がなかった夏は、ロケが始まってからは怒涛のように忙しく、飲み物以外何も口を付けてないはずだ。
それを忘れ、どこも寄らずに来てしまった。
冷蔵庫には、乏しいほどの食材しかない。
それに、あまり料理が得意ではない三善は、その乏しい材料で何かを作る事もできなかった。
「下のコンビニで何か……」
「冷蔵庫開けても良いですか?」
「え……? あ、良いけど……」
突然、夏が立ち上がり、そう言ってきた。
その言葉に、三善は、何も考えずに了承してしまった。
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