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8.切なくて痛くて、嬉しくて-4
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一口。その一口で、その味に魅了される。
「おっ!」
「お?」
「おいひぃッ!」
ケチャップライス。ただのケチャップライス。
なのに、今まで食べて来た中で一番美味しかった。
それに、心がジワジワっと温かくなり、ホッとした。
「そう? よかったー、そう言って貰えて」
「なっ、何か隠し味とかあるの?」
「えー、ないっすよ。でも、そうですね。あえて言うなら……究極の愛。三善さん、好き好きぃーッて入れときました。なんちって」
夏はそう言うと、ふはっと照れながら笑った。その笑みに、三善は、ボッと顔から火が出たように赤くなった。
「な、なに言ってんの……」
こんな風に、誰かからご飯を作って貰ったり、それを食べたり、二人きりの環境にこういった時間は無かった。
それに、こうやって自分の家に誰かを呼ぶ事も今まで無かった。
でも、何故自分は、夏を呼んでしまったのだろうか。
ただ、一度だけのセックスをする為に、ホテルを選ぶ事もできたのに。
いや、ホテルは危険だ。
夏は芸能人で、アイドルだ。
ホテルなんて連れて行ったら、誰が見ているか分からない。
けれど、そう考えてふとこう思う。
(……今までの俺は…そこまで相手の体裁を考えていただろうか……….)
そう。今まで身体を繋げて来た人間は、一般人だけではなく、芸能関係の人間もいた。
今でもテレビに映る男もいるし、今ではテレビに映る男もいる。
でも、その時は相手に任せる事が多かったけれど、それでも、ホテルは危険だなんて思った事は無かった。
だって、そこまで、相手の事など考えてなどいない。
「でも、愛は本当ですよー。だって、これは三善さんの為に作ったんすから」
「じ、自分の為でしょ……」
「違いますよー。自分のはついで」
「ついで?」
「うん。そうっす」
夏はそう言うと、右手を伸ばし、三善の口元についていたお弁当を取って、口に運んだ。
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