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12.朝が来て、そして…-2
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人間は、なんて脆い生き物なのだろうか。
好きだと自覚して、その相手が重体になり、まだ、目が覚めない。
ぎゅっと強く手を握っても、その手は温かいのに、握り返してはくれない。
「夏……」
〝容体が安定しました〟
その言葉に安堵したのは一瞬だった。
個室に移った夏の口元はまだ酸素マスクが付いていて、腕には点滴が施されていた。
子供を庇ってできた傷跡は包帯で巻かれて見えないが、目元に付いた打撲はくっきりと付いていた。
(ここにも……痛々しい跡がある…………)
遠くからは気付かなかったその跡は、側に寄れて気付き、胸が詰まる。
「俺、何か飲み物買ってきます……」
「うん……」
「あと、一旦事務所に戻った社長に連絡入れてきます……」
「うん……」
「……その間、夏の事よろしくお願いします」
「分かった……」
壱成が頭を下げているのが分かる。
でも、その姿を見ながら返事を返す事はできず、三善は夏だけを見詰めた。
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