アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
13.笑顔の三善、泣いてる三善-3
-
夏があまりにも驚くから、三善をちゃんと見詰めているから、笑みが出て、涙も出る。
「三善さん……」
「へへ……安心しちゃった……」
三善は、笑みを作りながら、赤くなった瞳からまた溢れる涙を手で拭った。
何度も、何度も泣いたのに、笑いたいのに、なぜだろうか、涙が付いてくる。
「夏君の…笑った顔……見たから……っ」
笑って、困って、驚いて、一度に色んな表情が見れて、三善は、ようやく夏が生きていると実感できた。
「僕……不謹慎な事っ…ばっかり……」
夏が意識がない間、色んな事を考えてしまった。
どうして、夏だったのだろう。
他の人間でもよかったのではないだろうか。
夏じゃない誰かが、こうなればよかったのに。
そんな事を思ってしまった。
「死んだら……っ。どうしようって……」
「三善さん……」
「夏が……死んだらって……どうしようって………」
夏は絶対に大丈夫。
そう思う反面、嫌な事ばかりが頭に浮かんでいた。
「子供…なんてどうでもいい……っ……夏君が……夏君がその子の代わりに死ぬのなら……」
子供の命が助かってよかった。
心の底からそう思う。
でも、その代わりに夏が死ぬ事になるのなら、三善の選択はその言葉のままだった。
「僕は…っ……」
自分で何を言っているのか分かっている。
こんな事言いたくない。
けれど、三善にとって夏はもう、片時も離れたくはない存在なのだ。
だから、怖い。
夏が目の前から消えるのが。
「自分の命を守って欲しいっ……子供なんて…他人なんて……もう…助けに行かないでっ……」
夏は優しい男だ。
優しくて、見て見ぬ振りができない男。
だから、三善の事も受け入れてくれた。
そんな性格だから、三善は夏を好きになった。
けれど、その優しさで自分の命を犠牲にするのなら、そんな優しさいらない。
優しさよりも、夏が大切なのだ。
夏の身体が大切なのだ。
「夏君が死んだら…っ……僕は生きて行けない………」
夏が危険な状態になったと知った時、息の仕方を忘れた。
人は、不安や恐怖が一気に襲って来ると、息が止まるほどの状態になるのだと、三善は初めてそう感じた。
そして、その時、三善は思った。
夏が死んだら、自分は生きる事ができないと。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
94 / 192